2019/03/10

自分で修理!削れた革靴のかかとを交換してみる

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皆さん、こんにちはTomi(@tmkprch)です。

 

革靴はいくら大事に履いていても、しばらくすると必ず「かかと」が削れてきますよね?
これは、その靴を皆さんが履いて楽しむ限り、どうしても避けられない事象です。従って、定期的に削れたかかとを修理する必要がありますが、これを放置しておくと、交換し難い部分まで削れてしまって、修理に出しても結構オオゴト(高価)になってしまいます。

 

かかとの修理はオオゴトになる前であれば、意外に自分で修理出来てしまいます。最初は修理部品などを揃えなくてはいけませんが、一度揃えてしまえば、以後はこまめに自分で修理が出来ますので、とても便利ですよ!しかも、この作業は靴作りのひとつの作業工程でもあります。私も靴作りの入り口として、かかとの修理を自分でやってみることから始めました。

 

この記事では、削れてしまった革靴のかかとの修理を、「トップリフト」と呼ばれる地面に接しているパーツを全交換する方法をご紹介します。

 

必要な道具

では、まず修理に必要な道具達をご紹介します。
靴作り全体も通して体系的にこちらの記事で紹介していますのでご覧下さい。
参照記事中の「トップリフト交換」の部分が今回の必要な道具に該当します。いきなり本格的な道具は高いし買えない、という方向けにジェネリック道具もご紹介しています。

 

この中で、今回の作業で必須のものは以下の5種類です。

 

釘抜き(ヒールはがし)

ジェネリックとしてはニッパー、マイナスドライバー、ラジオペンチ、あたりです。

 

 

 

本職向けは左画像のような特大の釘抜き(通称:えんま)を使います。特にヒールだけではなくて、ソールもはがすような時はとても便利です。なければ右のようなラジオペンチで何とか頑張りましょう。

 

ヤスリ

棒ヤスリ(平ヤスリ木工用と鉄工用)と、紙ヤスリ(#200〜#600位)の両方。

 

 

 

接着剤

皆さんお馴染みのボンドG17でも大丈夫です。

 

ボンド G17 170ml

 

インク

コバ用インクまたは油性マジックでもOK。

 

 

[ブートブラック] EDGE COLOR BBエッジカラー

アーテック マッキー(油性) 12色セット 91621 太

 

包丁

中型サイズのカッターでいいですが、替刃として、通常よりも鋭角に刃がついている「黒刃」の新品を惜しみなく使って下さい。

タジマ ドライバーカッター L560 オートロック 黒 適合替刃L型 DC-L560BBL

 

 

事前準備

道具が揃いましたら、いよいよ準備開始です。まずは、自分の靴の削れた状態をよく確認しましょう。今回の私の靴(コールハーン)の場合はこんな状態でした。

 

 

かかとの外側が削れていますが、画像中の黄色いラインまでは削れていません。
この黄色いラインが「トップリフト」というパーツと「積上げ」というパーツの境目になります。

 

 

 

上の画像は外したトップリフトのみのものです。
ゴムが削れてもうすぐ無くなりそうになっていますがいますが、まだトップリフトの革は残っています。これがさっきの「黄色いライン」でした。このトップリフトの革の部分も削れてしまって、その上の積上げまで削れてしまうとオオゴトになります。

通常、トップリフトは交換出来るようになっていますが、積上げはそうではありませんので、かなりの大手術になります。今回はトップリフトの交換だけで済みそうです。

 

 

真下から見るとこうです。実はこのヒールは私が以前「コーナー修理」をしたものです。コーナー修理とは、画像のゴムの部分だけを交換するやり方です。これが一番簡単なので私は普段はこのコーナー修理方法を多用しますが、今回は靴作りの入り口として、トップリフト交換でやっていきましょう。

 

 

 

これがトップリフトの新品になります。通常はかかとの外側が削れていきますので、外側にゴムが来るようにつけていきます。革のトップリフトはなかなか普通のお店や通販でも売っていないと思います。通販で入手可能な靴材料はこちらの記事でご紹介していますのでご覧になって下さい。

 

さて、準備で重要なのは厚み計測です。靴のヒールの高さは木型の段階で決まっていますので、修理の際にむやみにこの高さを変えてしまうと、削れた部分は直っても歩き難い靴になってしまいます。
まず、既存のトップリフトの厚みを測りましょう。

 

 

約5.5ミリほどに見えますが6ミリと見ておきましょう。多くのトップリフトの厚みは6ミリ〜8ミリ位だと思います。念のために後ほど外した後でも再度計測しましょう。

 

 

 

付け替える方のトップリフトの厚みも計ります。5ミリですね。ちょっと薄いものでした。先程ヒールの高さをむやみに変えると歩き難くなると書きましたが、私がよく参考にさせて貰っている靴修理屋さんによると、その分かれ目は2ミリだそうです。つまり、差が2ミリ以内ならばまだ違和感は出ないのですが、2ミリを超えると途端に違和感を感じるんだそうです。
ここでは1ミリの差ですので、このまま作業を進めていきましょう。

 

 

自分で出来る修理のやり方

さて、いよいよ修理に入りますが、まずトップリフト交換の場合の大まかな流れをご紹介しておきます。

 

①既存のトップリフトをはがす、積上げの底を平らにヤスる
②接着面を荒らす、接着剤を塗る、接着する
③はみ出た部分を切り取る
④ヤスリで表面を綺麗に整えて仕上げる
⑤染色とワックス

 

少しご紹介したコーナー修理というのは、流れは同じですが対象がトップリフト全体ではなくて削れたゴムの部分だけですから全体作業がもっとコンパクトになります。
また、オオゴトになってしまう場合ですと、1. の後、積上げの底が欠けているということになりますから、欠けている所に革を貼り付けて補うという作業が必要になります。

 

①トップリフトをはがす

では作業を進めていきましょう。まずは既存のトップリフトをはがしていきます。

 

 

釘抜きを使うと、こうメリメリッと意外と簡単にはがすことができます。

 

 

 

釘抜きがない場合は、まず画像の部分にマイナスドライバーをグリグリと差し込んで隙間をひろげていきます。この時積上げに傷がつかないよう注意しましょう。

 

 

 

その後ラジオペンチを使ってはがしていきます。

 

 

 

はい、はがれました。はがしてみるとよく分かるのですが、画像の靴の積上げは実は革ではなくて「くず革」を固めた素材(ナンポウといいます)で出来ています。革靴の積上げは、伝統的には1枚1枚革を積上げて「積上げ」を作っていくのですが、大量生産靴にはこのようなくず革を固めた素材で3段分最初から成形されているものが使われていることが多く見受けられます。
真ん中には軽量化目的でしょうか、穴もあいています。

 

このナンポウの場合、劣化が革よりも早い場合が多く、劣化し出すとボロボロと崩れてきますので、なかなかにやっかいものです。今回は特に崩れていませんが、劣化が酷いと外すときに大きく崩れてしまう場合がありますので、はがす際は慎重に行いましょう。

 

 

さて、外したトップリフトの厚みを改めて計測してみますと7ミリありました。新しいトップリフトが5ミリですから、ギリギリ2ミリの誤差ということでこのまま付けても良いのですが、手元に1ミリ厚の床革がありますので、これを貼った上にトップリフトを貼っていこうと思います。

 

②トップリフトの接着

まず、床革を用意して大まかに形を写し取ります。床革は今回のような使い道以外にもあると色々便利ですからぜひ常備しておくことをお勧めします。

 

 

 

床革を切り出したら、かかとのカーブの曲線を写し取ってカットしておきましょう。接着した後にやろうとするととても作業し難いので先にやっておきます。

 

次に、積上げの底を平らに削ります。ナンポウ素材は革に比べて削れやすいので、手が滑ってしまうと一気にへんな風に削れてしまいがちですから注意深く削りましょう。

 

 

 

後ろからも見て、平らに削れているかどうか確認しましょう。

 

次にボンドを塗布して接着していきます。ここでは手に入りやすいボンドG17を使います。

 

 

少し大きなサイズのG17を買うと画像にある平らな塗布口のパーツが付いてきますが、これがあると大きな面積にボンドを塗布するのがとても便利ですからお勧め致します。

 

 

 

ボンドがこぼれてますけど(笑)、こんな風に広く塗りやすいですよ。積上げの底面と貼り付ける床革の両方に塗布し終わったらよく乾かします。

 

 

「よく乾かす」というのは色々な流儀があるようですが、接着剤の表面が乾いて指で触ってもベトつかない状態、というのが定性的な状態です。定量的には20分程度から半日以上乾かした方が良いと言う人もいます。なお、革はボンドを吸い込みます。場合によっては2度塗り3度塗りしましょう。

 

 

 

さて、乾いたら接着するのですが、その前に、ドライヤーの熱風(画像はミニヒートガン)で接着剤に熱を与えて活性化させます。積上げ側、床革側両方に熱をよーくあてましょう。これをやるのとやらないのとでは大きな違いが出ますので重要作業です。

 

 

 

暖まったら、貼り付けてよく圧着します。画像のようにハンマーで叩くのがやりやすいでしょう。

 

 

 

このような台金があると圧着作業や釘打ち作業がとてもやりやすくて便利ですが、ない場合はスチール空き缶(中身は空にしておきましょう)の上に履き口を下にして靴をかぶせて簡易的な台金にする方法もあります。あるいは、しっかりとしたシューツリーを入れてそれを台にしてハンマーを打ち付けても出来ると思います。

 

 

 

接着出来たら、はみ出た部分をカッターで切り取っておきます。

 

 

 

こんな感じですね。この上にトップリフトを貼り付けて行きましょう。

 

 

 

まず、積上げの底、先程床革を貼ったので床革ですが、これをよく荒らしておきます。接着性を高めるためですね。

 

 

 

上の画像の左が荒らしたもの、右が何もしていないものです。接着面を荒らしておくと、接着剤がその荒れた隙間に入り込んで接着力が増します。この作業をしておくのとしないのとでは接着力に大きな違いが出ますのでこれも重要な作業です。

 

 

 

同様に、トップリフト側もゴムの部分も含めてよく荒らしておきましょう。

 

 

 

先程の床革の時と同じく、かかとのカーブ曲線をトップリフトに写して先に切り取っておきます。

 

 

 

こうやって印もつけておくと、貼り付ける際の参考になって便利だと思います。

 

 

 

先程と同じくボンドG17を塗布して乾かします。画像は2度塗り状態です。乾いたら先程の位置合わせの印を参考にしてずれないように気を付けながら貼り付けます。

 

 

 

あ、右足と左足を間違えないように貼って下さいね。ゴムがかかとの外側にくるように貼ります。ハンマーなどでよく圧着しましょう。

 

 

 

台金がある場合はこのように靴をかぶせてハンマーでよく叩いて圧着します。

 

 

一部、接着剤の塗布が甘くて浮いていましたので、接着剤をハケで塗り足して浮いたところをよく付け直しました。
なお、はみ出たボンドG17はこのようなゴムのりの固まりを使ってこすり取ると綺麗になります。

 

Prettyia 生ゴム製  スエード&ヌバック

 

③はみ出た部分を切り落とす

さあ、トップリフトが接着出来ましたら、次は仕上げに入っていきます。これまでの工程は履き心地を左右しますが、見た目を左右するのはこの仕上げ工程になります。慣れないうちはなかなか上手く行かないかもしれませんが、大丈夫です。やってるうちに必ず上達してきますし、何より、トップリフトの仕上がりは普段は地面に接するところなのでほとんど他人からは見えませんから(笑)

 

仕上げ工程の中で、一番上手くいかないのがこの作業だと思います。私もいまだに上手く行くことはほとんどありません。ですが、この後の作業である程度挽回出来ますので、恐れずに思い切ってやって下さい。

 

 

まず、怪我を防止するために防刃手袋またはそれに類するものをはめることを強くお勧めします。私は以前大けがしてから手袋をはめるようにしています。

 

そして、中型サイズのカッターですが、刃は切れ味の良い黒刃の新品を装着しましょう。下の画像のようにかかとのコバ面に刃を沿わせながらはみ出た部分を切り落としていきます。

 

 

革の部分は比較的順調に切れると思いますが、問題はゴムの部分です。そのままカッターの刃だけで切ろうとするとゴムはさすがに硬くなかなか刃がすすみません。

 

 

 

そこで、上の画像のように左手で切れ端をつまんで持ち上げてあげながら切っていくと、これが不思議な位刃がスーッと入って簡単に切れます。

 

この時に注意して頂きたいのは、カッターの刃の角度です。
上の画像は写真をとるために右手を離しているのでカッターが斜めになってしまっていますが、仮にあのような角度で切ってしまうと切り終わった後のゴムがかかとよりも小さくなってしまうため見た目が悪くなってしまいます。

基本は、かかとのコバ面にぴったり刃を沿わせるか、少し持ち上げる位が丁度良いかもしれません。大きい分には微調整は利きますので切り終わった時にコバよりもゴムが少し大きいくらいが良いでしょう。

 

 

ざっと切り終わった状態です。数カ所、カッターの刃が傾いてしまいゴムが切れ過ぎてしまった箇所があります。

 

上の画像の黄色い丸の箇所がえぐれてしまっているのが分かると思います。カッターの刃が食い込み過ぎてしまうとこうなってしまいます。でも大丈夫です。プロの仕上がりのようにはいきませんが、この後の仕上げ工程で目立たなくすることは出来ます。

 

 

上の画像の黄色い丸の箇所がえぐれてしまっているのが分かると思います。カッターの刃が食い込み過ぎてしまうとこうなってしまいます。でも大丈夫です。プロの仕上がりのようにはいきませんが、この後の仕上げ工程で目立たなくすることは出来ます。

 

 

 

両足とも切り取りが終わりました。一部ガタガタして見えますので、これらをヤスリで全体のバランスを整えて目立たなくして行きましょう。

 

④ヤスリで仕上げる

さて、ここからヤスリで仕上げていきますが、手が滑っても靴本体の革に傷がつかないようにマスキングテープを貼って保護しておきましょう。革に直接貼るマスキングテープは塗装用の紫色のもの(一番粘着力が弱い)をお勧めします。これをさらに粘着力を弱めるために、一度洋服などに貼り付けます。

 

 

こんな風に何かに一度貼り付けてからはがすと粘着力が弱くなりますのでそれを靴にはります。

 

 

 

私は、紫のマスキングテープを2枚貼った上に黄色いマスキングテープを貼りました。これで多少ヤスリがはみ出ても安心です。そうしましたら、#200位の紙ヤスリから削っていきましょう。かかと全体が凸凹しないように、出っ張っている部分を意識して平らにならしていきます。

 

 

 

ゴムの部分は鉄工用ヤスリでやっても良いかと思います。とにかく、手でヤスる以上、プロがグラインダーを使ってやるようなツルピカの仕上がりには残念ながら、なり得ません。綺麗にならないなぁ、と思うかもしれませんが、あきらめずにとにかく凸凹がなくなるように地道にヤスっていきましょう。

 

 

 

ヤスリ続けて15分程、こんな感じになりました。どうでしょうか、だいぶ凸凹が目立たなくなっていませんか?

 

 

 

この位まで来たら、革の部分を水を使って締めていきましょう。今回の私の靴は積上げ部分はナンポウですのでこの作業は不要ですが、新しく付けたトップリフトの一部と床革部分が革ですから、ここを水で濡らしてハンマーで(持っている人は踵ゴテで)ぎゅっと強く押しつけて革自体を強く締めていきます。

 

 

 

まずブラシ(古い歯ブラシでもOK)で革の部分を水で濡らしていきます。

 

 

 

そうしたら、濡らした所を上の画像のように、ハンマーでギューッと押しつけて革の繊維を固めていきます。一通り革の部分を押し固めたらOKです。先程までの革の表情が少し木のように堅さを持った表情に変わっていませんか?

 

 

 

このような状態になりました。次はいよいよ、色をつけていきます。

 

⑤染色とワックス

染色は道具の所でご紹介したコバインキをお勧めします。垂れないように気をつけながらかかと全体に塗っていきます。マスキングテープがありますから多少はみ出ても安心です。

 

まれに、中底と底革の間にゴム素材のミッドソールをつかっている場合などインクが乗らない場合もあります。また、何かが付着しているのか、インクの乗りが悪いナンポウも見受けられることもありますが、そのような場合はマジックインキで塗ってしまうのもお勧めです。(twitterの靴界で有名な@Zin_Ryuさんがご紹介してくれたテクニックです)

 

 

一度塗りでこのような感じです。特にナンポウ部分にツヤが出ていません。乾いたらもう一度コバインクを塗って、その後で靴用のワックスを塗ってツヤを出していきます。

 

 

 

使うのはこのような普通の靴用ワックスです。これをかかと部分に塗り込んで少し乾かした後布で磨いていきます。

 

 

 

どうでしょうか。ワックスでツヤが出てきてますね!修理前はかかとに細かい傷もついていてひどい状態でしたが、ヤスリで凸凹を整えた結果、ずいぶんと傷が消えています。では、完成後の写真を何ショットかご紹介します。

 

 

 

後日、ハーフラバーとつま先ゴムも貼り終えて、茶色のコールハーンの修理完了です。

 

さあ、如何でしたでしょうか。今まで当たり前のようにお店に修理に出していた方もぜひ次の機会にはご自分で修理にトライするのも楽しいと思いますよ!

 

皆さんのシューライフがもっと楽しくなりますように!

この記事を書いた人

Tomi

レザークラフトを10年以上趣味として続けており、名刺入れなどの小物からダレスバッグなどの鞄まで一通り経験。いよいよ次は靴作りだとチャレンジを始めました。
道具マニアでもあるので、靴作りのチャレンジは靴作りの道具集めから入りました(笑)

 

書籍や修理屋さんのブログなどで作り方を調べ、独りで試行錯誤しながら踵修理を入り口にオールソールまでやってみたところで、MSYに出会い、Twitter界に靴作りへの熱い想いを持つ人達がいることを知り大喜び。
次第に交流を深めるうちに、気付いたらメンバーのひとりになっていました。

 

きっと、かつての私のように靴を作りたい想いを抱えながら、どうやって作れば良いかよく分からない人達がたくさんいるんだと思っています。早くそんな皆に出会って、一緒に、賑やかに、靴作りを楽しみたいです。

 

twitter : @tmkprch
note : https://note.mu/merrygoround2030

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