2019/08/31

【限りなく引退に近かった革靴】アッパーの破れを手縫いで修理!

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こんにちは。MSY代表のブン(twitter)です。
MSYは「靴作りをもっと身近に」をモットーに、趣味として靴作りを楽しむための方法を模索&発信しております。

 

自分で作った靴や、愛着のある靴は長く履き続けたいですね。
そのためには修理は避けて通れません。

 

靴作りと修理。
非常に密接な関係があり、どちらもとにかく奥深く、そして楽しいんです。
自分の靴を修理することから靴作りに少しずつ触れていく、というのもオススメです!

 

ある日、ふとこんなことをつぶやきました。
すると間髪入れずZinRyuさん(twitter)からこのような申し出が。

 

 

ボノーラ(※)のローファーです!
※ボノーラ=1878年にイタリア・フィレンツェで創業した革靴のブランド。過去にジョン・ロブの靴の製作を請け負っていた。

 

どうやらこんな出来事があったようです。

 

※アンラインド=ライニング(革靴の裏地)がなく、アッパーが1枚革のこと。

 

非常に痛々しいですね。
こちらの靴を、リメイク用の素材としてご提供くださるとの申し出です。

 

数日後、さっそく靴が到着。
この靴の再生プランについてじっくりと考えていきます。

 

破れた場所の確認

 

ご覧の通り、右足の小指あたりがパックリと裂けています。
ちなみに左足は特にダメージは見当たりませんでした。破れた右足は、左足よりも大きなテンションがかかっていたそうです。

 

 

リメイクする?修理する?それとも。

こちらのローファーは「24.5cmで大きめな作り」とのこと。
なお私のサイズは同じ24.5cm。

 

私の木型と比べてみました。

 

 

表記サイズは同じとはいえ、実際の大きさや形はかなり異なります。
もしリメイクすると、モカ縫いのデザインが完全に破綻してしまうことが明らかです。なお、この木型は他でもないZinRyuさん製です!

 

革靴リメイクに向いているデザイン・選び方のポイントについては、下記記事をご参照ください。

アッパーの抽出方法(中古靴を分解)
※「1.2 デザインの選び方」参照

 

今回の革靴は、リメイク時のデザイン影響度「大」に該当いたします。
よっぽど木型がマッチしていないと難しいです。
・・残念ながらリメイクは断念せざるをえませんでした。

 

ではどうするか?
修理することに決めました。

 

 

手縫い修理のための工具・素材

今回の修理で使った代表的な工具や素材をご紹介いたします。
ネットで簡単に手に入るものがほとんどです。

 

工具

 

レザーミシン針

オルガン 〔型番:HA×1LL-ミックス〕ミシン針レザー用針HA×LL家庭用5本入

オルガン 〔型番:HA×1LL-ミックス〕ミシン針レザー用針HA×LL家庭用5本入

 

レザーミシン用の針です。これを使って手縫いで使おうと考えました。
そのために必要なのが、こちら。

 

スピーディーステッチャー

片手で縫える レザークラフト用 スピーディーステッチャー  

 

これにミシン針をセットして縫います!

 

今回特筆すべきは以上の2点です。
スピーディーステッチャーは各社から色んな商品が出ていますので探してみてください。
あとはピンセット、マスキングテープ、紙ヤスリ、クッキングシートを使いましたがどれもダイソーなどで簡単に手に入ります。

 

すべて合わせても2,000~3,000円ほどで揃います。

 

素材

 

国産カーフハギレ

 

補修革です。自分用に作った革靴のアッパーの余り革です。
焦げ茶のカーフ。丈夫で実績もあるのでこちらを採用いたしました。

 

ハギレは東急ハンズさんや、アンドレザーさんなどでお求めいただけます。
ANDLEATHER’S GALLERY

 

伸びどめテープ

画像1: Dナイロンテープ10mm黒・白

Dナイロンテープ10mm黒・白

 

裂けた箇所のフチに貼ることで、強度を高めます。

 

レザーミシン糸

FUJIX キングレザーミシン糸 #30 200m巻 402黒

FUJIX キングレザーミシン糸 #30 200m巻 402黒

 

補修革とアッパーを縫い付けるためのミシン糸です。

 

接着剤

画像1: ダイアボンド888・180mlチューブ入り

ダイアボンド888・180mlチューブ入り

 

毎度お馴染み、万能な接着剤です。チューブタイプは本当に使いやすいですね。

 

今回かかった材料費を計算してみました。
目算の使用量から単純計算していますので、あくまで参考程度にご覧ください。

 

補修革(カーフレザー) 75円
伸び止めテープ 10円
レザーミシン糸 3円
接着剤 10円
 合計 98円

 

 

修理手順

それでは実際の修理の工程をご紹介いたします。

 

補修革の準備

傷全体を覆う位の大きさに革を切り出し、紙ヤスリ#120で荒らしておきます。
また、履いたときに違和感を感じないよう、外周を漉きます。

 

 

漉き作業については下記の記事をご参照ください!
自分で行う革靴の補修:靴のかかと内側の革の破れ編
※「2.2 あて革の準備 」参照

 

補修革を貼る予定の位置の外側にマスキングテープを貼ります。
その内側を、紙ヤスリで荒らします。#60と#120を使いました。

 

 

後の工程にて接着剤を塗る範囲の目安になります。

 

伸びどめテープ貼りつけ

裂けてしまった箇所のキワキワの場所に伸びどめテープを貼ります。

 

 

裂けた付近の場所に負荷がかかってしまうことを防ぐためです。

 

補修革貼りつけ(アッパー内側)

補修革の接着面、およびアッパー内側の接着面。
その両方に接着剤(ダイアボンド)を万遍なく塗布します。

 

 

30分以上放置して乾燥をさせます。私は一晩置きました。

 

この時点では中底面は接着させたくないため、クッキングシートでガードします。

 


クッキング「ペーパー」ではなくツルツルしたクッキング「シート」ですので購入される際はご注意ください。

 

クッキーを焼くときに使ったりするあれです。本当に便利です!
熱活性でベトベトになった接着剤が、他の場所に接着しないで済みます。

 

ではピンセットで補修革を慎重に目的の場所にペタリと接着!

 

 

内側と外側からグッとしばらく押さえました。
補修革の中底面側は、事前にスタンバイしていたクッキングシートでそっと包んでおきます。

 

補修革も、そして心も果てしない安心感に包まれながら、次の作業へ移ります!

 

アッパー側から手縫い

ここからが山場、手縫い作業です。
さきほど伸び止めテープを貼ったキワキワの部分を縫います。
事前に下穴を開けるため、まずは2mm間隔の印をつけます。

 

 

コンパスがあると便利ですね。

 

印に合わせてミシン針で穴をあけていきます。

 

 

靴の内側にセットした手を刺さないよう注意!
下穴が全て空いたら、いよいよ縫います。

 

工程としては下記の要領です。

 

 

①先端に糸を通しておく
②針を刺し、少し引き戻して輪を作る。
③糸を輪に通す。
④針を外側に引き抜き、糸を両側に引っ張って締める。
ちなみに③で通す輪を間違えると、縫うことが出来ません(が、簡単にやり直しできます)。

 

針&糸の通し方は動画をご参照ください!

 

 

はじめての作業ということもありましたが、これは難しい。。

 

 

靴内部の輪に糸を通すのが難しく、ピンセットを駆使することで乗り越えました。
ピンセット作業はこちらの動画をご参照ください。

 

 

いままで経験したことのない細かい作業に手がプルプルでしたが、なんとか縫い終わりました!

 

 

では続いて靴内部を接着します。

 

補修革貼り付け(中底側)

接着面は事前に紙ヤスリで荒らしてありますので、
補修革と中底側に接着剤を塗布し、数時間放置します。

 


クッキングシートを隙間から差し込んでおくと、誤って接着してしまうことがありません。(便利!!)

 

 

数時間後。
クッキングシートをズラしながら少しずつ貼り合わせ、グッ!と押さえます。

 


貼り合わせ完了です!あと一息!

 

アッパー断面を埋める

最後に、アッパー外側に革の断面が少し見えていましたので埋めました。

 

 

黄色系の強いダイアボンドでは目立つかもしれませんので、ここはノーテープ9820を使用しました。
革同士の接着にはこれが最強だと思っています。

 

ということで、完成いたしました!

 

BEFORE

 

AFTER

 

縫い目の乱れがどうしても気になりますが、今の自分に出来ることは全てやり尽くしました。

 

 

そして主のもとへ

もともとはリメイク用にご提供いただいたボノーラでしたが、
なんとか修理もできましたので、ご本人にまた履いていただけることになりました!

 

 

 

さいごに

実はリメイクから修理に切り替えた時点では、ご本人に返却する事を全く考えてませんでした。
ただ目の前の革靴に夢中になってただけ。。

 

修理後、また履いてくださるとは。そして喜んでもらえるとは!まさに幸甚の至りと言えます。

 

あ、慣れない言葉を使ってしまいました。つまりスーパー嬉しかったです!!

 

 

我々MSYは靴作りの楽しさを伝え広めるために活動をしております。
ちなみに今回のような修理を受け付けているわけではございませんので、何卒ご了承ください(笑

 

趣味の靴作りにご興味を持たれた方は、いつでもご連絡ください。MSYでお手伝い出来ることがあれば全力でサポートさせていただきます!

この記事を書いた人

ブン

底付け歴50年の経験をもつ職人さんに個別レクチャーを受け、底付け技術を学びました。
結婚・引っ越しなどで靴作りを中断し7年間ほどのブランクがありましたが、Twitterでのやり取りに刺激をうけ、再開いたしました。

 

技術力はありませんが、未経験の手法にチャレンジし、自分なりの工夫を加えて実験をするのが好きです。
失敗から得られるものにこそ、特別な価値があると感じています。普通は公開したくないような自分の失敗やミスは、むしろどんどん発信します。
靴作りの趣味を広めるために2018年6月、MSYの前身である「靴作りプロジェクト」を立ち上げました。
自分の経験が皆さんのお役に立つことを第一に考えています。一緒に楽しみましょう!

 

twitter:@Wani_Fumihiro
note:https://note.mu/bunwani

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