自分で行う革靴の補修:靴のかかと内側の革の破れ編

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「多くの人は自分の望んでいることを信じてしまう」といった趣旨のことを言ったのは、かのガイウス・ユリウス・カエサルと言われています。
スーツを着ている人の多くは革靴を履いていますが、これらの人々もまた、その多くは「痛くない」「ユルい」靴を自分の足にフィットする靴だと信じて履いていることでしょう。

 

皆さん、こんにちは。趣味のレザークラフトから始めて今では週末コブラーを楽しんでいるTomi(@tmkprch)です。

 

かくいう私の知り合いも前述の一人でして、「巻き爪」になった過去の経験が恐怖として残っており、かなり余裕のあるサイズの靴を履いています。結果的にどうなるかというと、まー見事なまでに擦れて破れるんです、かかとの内側が。。。

 

ということで、かかとの内側の破れたところを修理するのと同時にサイズの大きな靴のフィット感を高める(※あくまでも簡易的なものです)補修方法をご紹介致します。簡単ですから、ぜひ皆さんも試してみて下さい。

 

必要な道具・材料

さて、例によって必要な道具からご紹介します。取り立ててご紹介する程の道具もありませんが・・・

 

1 カッター

何度も登場しますのでもうお馴染みですね。大型サイズのカッターです。通常よりも鋭利な刃である「黒刃」装着のカッター(もしくは、黒刃の替刃を購入)をお勧めします。

 

タジマ ドラフィンL561

 

2 柔らかい紙(クラフトペーパー)

型紙として使用します。あまり見かけなくなりましたがスーパーで貰う茶色い紙袋のあの紙です。薄いチラシ紙でも良いと思いますが、茶紙は意外に使い勝手が良いので見つけたらぜひ取っておきましょう。

 

 

 

3 接着剤

皆さんご存知、ボンドG-17でOKです。

 

ボンド G17 170ml

 

4 ヌメ革

さて、これが今回のメインディッシュです。色や厚みは皆さんの状況に応じて合ったものを選びましょう。ここでの題材は、かなりゆるい靴でしたので思い切って4ミリ厚の黒いヌメ革を使ってみました。
結果的にシューツリーがキツキツになりましたが、履いている本人は窮屈過ぎずフィット感が向上して喜んでいました。

 

通常は1ミリ〜2ミリ程度で良いと思いますが、どれ位余裕があきすぎているかに応じて選んで下さい。

 

 

大きささえある程度あれば端切れのヌメ革で十分ですから、東急ハンズやユザワヤなどがお近くにある方は覗いて見て下さい。通販のカット革(下の画像)でも良いかと思います。

 

カットレザー ヌメロ 牛革 約1.6mm厚 15×30cm ブラウン

 

 

かかと修理のやり方

道具と材料が揃ったら、いよいよ修理に取りかかりましょう。
今回の題材はこの子、私の知人の愛用するチャーチです。彼は基本的にゆるい靴ばかり買っており、更に、一度馴染むと同じ靴ばかり履き続けるという習性があるために、所持する靴のかかとは次々に内側がやられてしまいます。このチャーチも一度私が修理したのですが下の画像のように半年後にはこのような状態となってしまいました。

 

 

かかと内側の破れ、いわゆる「すべり革」補修には色々なやり方がありますが、この記事では最も簡単な「靴のかかとの形にあわせてヌメ革を切って貼り付けるだけ」方式をご紹介します。

 

型の取り方

まずは靴のかかとの形にヌメ革を切り出すための型を取りましょう。クラフトペーパーを使えば簡単に型を取ることが出来ますので便利です。

 

 

上の画像のように、適当な大きさのクラフトペーパーをあてがいます。ペーパー上側は適当で良いですが下側はまっすぐ直線状態にしておきましょう。ここから履き口トップラインに沿ってクラフトペーパーを折り返していきます。

 

 

この状態でトップラインに沿って鉛筆でラインを写し取ってあげれば型になります。なお曲線部分は下の画像のように切れ込みを入れてあげると折り返し易くなります。

 

 

 

こんな感じですね。鉛筆のラインで切り取ってあげれば型になります。反対の足も同じようにして型を取っても良いですが、裏返して使っても困ったことはありませんので私はいつもそうしています。

 

あて革の準備

今回の修理作業で一番重要なのがこの作業です。つまり、型の大きさに切り出したヌメ革に対して「漉き(すき)」を行っていきます。漉く目的は、あて革を貼った時に靴と滑らかに一体化させて違和感をなくすと同時に適切な厚みでフィット感を与えるためです。

さて、まずは型に従ってヌメ革を切り出して、左右が分からなくならないように印をつけておきます。

 

 

漉き作業は上下左右の四辺すべてに対して行いますが、それぞれ漉く厚みが異なります。下の画像の黄色い丸をつけた両端部分は「ゼロ漉き」と言って端の部分の厚みは限りなくゼロになるように薄く漉いていきます。両端は足に触れる所ですので、キッチリとゼロ漉きにして下さい。

対して、上辺は靴の状況にもよりますが元の厚みの1/3から半分以下位で良いと思います。下辺もゼロ漉きですが大体ゼロ漉きっぽくなっていれば良いです。

 

 

ということで、まずヌメ革を裏返して、四辺から1センチのところに漉きの目安線を引きます。

 

 

こんな感じですね。ぐっと滑らかにしたい場合はもっと幅を大きくして段々と薄くしていっても良いです。まずはこの線を目安に漉いていきます。

 

漉き作業自体はカッターよりも革包丁の方がずっとやりやすいですが、カッターでもコツさえつかめれば出来ます。
右利きの人の場合、漉きたい辺を下向き(自分の身体に近い手前側)にしてカッターを上からあてて、左から右へ漉きたい部分を刃をすべらせながら切り取っていく感じです。(別の素材ですが、下の画像を参考にして下さい)

 

 

あるいは、漉きたい辺をもう少し左向きにしても良いです(下画像)。自分がやりやすいポジションを見つけてみて下さい。
コツはこのやりやすいポジションを見つけることと黒刃などの切れ味の良いカッターの刃を使い、刃を滑らせながら(押し切るのではなく刃を動かして切る)切っていくことです。

 

 

漉く時はガラス板や砥石などの上でやると良いですがなければカッティングマットの上でも結構です。(この場合、刃が食い込むとやりにくいですが、、、)

 

 

今回私は革包丁を使って漉き作業を行いました。上の画像の下側のヌメ革が漉き終わったもの、上側がまだ漉いていないものです。こんな感じになるまで頑張って漉いてみて下さい。漉いている際に誤って端を切り落としてしまうことは良くあることです。多少ガタガタに切り落としたとしてもゼロ漉きになっていれば違和感は感じませんのでお気になさらずに。

 

 

両端のゼロ漉き部分はこんな感じです。もっと漉く幅を大きくして段々と薄くした方が靴との一体感は自然な感じになるのですが、今回の題材の場合は、極力厚みを残してフィット感を高めたかったので、ちょっと急にゼロ漉きになっている感じにしています。

 

貼り付けと仕上げ

漉きが終わりましたら、貼っていきましょう。削れたかかとの修理記事と同じく、接着の基本は、

塗り漏れがないように厚すぎず薄すぎず塗る → 乾かす → 熱風をあてる(熱活性) → 貼る

です。

 

貼る前の準備として、型紙を靴にあてて、ヤスリで表面をよく荒らしておきます。特に両端部分は違和感なくゼロ漉きになった端をピッタリと接着したいので型紙で場所を写し取って良く荒らして接着剤の塗り漏れがないようにしっかりと塗りましょう。

 

 

ヌメ革、靴の内側双方に接着剤を塗ってよく乾かし(20〜30分程度乾かしましょう)、ドライヤーで暖めてから貼ります。

 

 

貼るときのコツは次の通りです。読むだけだと分からないのでぜひ、やりながらコツをつかんでいって下さい。

 

  • 特に両端部分の塗り漏れがないように(ゼロ漉きで違和感なくピッタリと貼りたい)
  • 貼る時に位置がずれないように、かかとの中心線で靴側とヌメ革側両方に濃い鉛筆などで目印をつけておく
  • いきなり変なところが接着してしまわないように、靴の内側接着面の上に型紙をあて、その上から接着剤付きのヌメ革をセットする。(型紙で、意図しない部分の接着面同士がくっつかないように紙でブロックしておく)
  • 型紙を少しずらしながら、目印をつけたかかと中心部から貼り、上辺を貼りあわせながら片方の端まで貼っていく。もう型紙は全て取り払って残りの端も貼っていく

 

 

仕上げに、はみ出た接着剤などはこすり取っておきましょう。(スエード用のゴム消しゴムが便利です)最後に中敷きを戻して完成です。

 

如何ですか?靴のかかとの内側が破れていない方でも、同様の作業をすればかかと周りのフィット感を高めることが出来ます。少しサイズが大きな靴に対して私はこれをやってサイズ調整をしています。もし同様のことでお困りの方がおられれば試してみて下さい。

 

あなたのシューライフがもっと楽しくなりますように!!

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