靴作りに必須な木型を職人にオーダーしてみた。

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皆さんこんにちは!河野です!

今回は、自分の靴を自分で作るにあたって、まず最初に必要となる”木型”をオーダーした時のことを記事にしました!

 

通常は職人さんと2人きりで計測をするとおもうのですが、それが初めての方にとって木型をオーダーすることのハードルになってしまっているんじゃないか?、という思いで職人さんにお願いして、オープンに10人ほどをお呼びしたイベント形式で開催してみました!

 

そして、私がお願いした職人さんは、野口達也さん!

 

 

国家資格である義肢装具士さんとして今までに5,000人超の足を見てきた実績を元に、LIGHTBULB. というブランドを立ち上げ、メンズレディースのピスポークを木型の設計から製靴工程まで一気通貫して行われています。

 

 

 

ではさっそく、イベントの様子をお届けします!

 

職人さんって足のどんなとこ見てるの?

一同
よろしくお願いします!!

 

野口さん
よろしくお願いします!
それでは、まずは靴下を脱いで立ってください。

 

河野
了解です!
まずは具体的にどこを見てるんですか?

 

野口さん
まずは、足の雰囲気ですね。左右差があるか。
骨って出っ張ってるところがあるので、その位置関係をみてます。あとは、かかとの倒れこみ具合が標準から逸脱してるか、左右差があるか。皮膚のシワのよりかた、温度もみてますね。
河野
え…シワや温度!いきなりの想定外からスタート…!これは面白くなりそうだ…

 

 

野口さん
まず簡単に説明すると、外内側に縦アーチ2つと、横アーチ、の3つのアーチがあります。
3つの位置関係が、足で当たる部分と関係があるのかないのか。

 


アーチ説明(※1)

 

野口さん
あとは爪が長いなとかw
どこか当たる人は赤くなってたりしますしね。
それでは座ってください!

 

河野
爪ww初めての人達に周り囲まれる中で言われるとめっちゃ恥ずかしいなw次は切ってこよw
河野
見た感じ、どうでしたか?

 

野口さん
河野さんは、横アーチが若干低下してるかな、っていう印象です。定量的ではなく定性的な、観察ですね。

 

河野
ほうほう。ありがとうございます。

 

野口さん
じゃ足を動かさせてもらいますね。
力抜いて、だらんとしてください。
スポーツとかはやるんでしたっけ?

 

 

河野
そうですね、マラソンとかたまにやりますね。
動かしてもみるんですね!

 

野口さん
了解です。
そうですね、やっぱり関節の可動域を見ますよね。
あとは皮膚のシワの入り具合とかも見ますね。

 

当たり前ですけど、関節が柔らかい人とか靭帯が緩い人は、体重がかかった時にアーチが崩れやすいので、その崩れ方とかバイオメカニクス的なトコロを見ていきますね。

 

河野
お、バイオメカニクス…(注:整体力学) かっこよさとは別次元で考えなきゃいけないことがあるんだな。木型は深い。

 

野口さん
じゃ次は左足見ましょうか。
あ、そういえば靴に製作とかメーカーさんとか、関わられてる方とかっていますか?

 

参加者
今はメーカーで、学生時代はシューフィッターをしていましたが、足首から上の部分はわからないですね…どんなとこを見てるんですか?

 

野口さん
足首から上の部分は、膝と足首を結んだ線がどうカーブしてるかを見てますね。成長の過程で変わったり、左右差がある方とかもいるので。あと欧米の方は比較的まっすぐって言われてますね。

 

河野
O脚だとやっぱりカーブがきつくなるんですかね?

 

野口さん
実はO脚は、膝の部分での曲がり方なので、足首を結ぶ骨のカーブはあんまり関係ないんですよね。あ、関係なくはないかな…?w
でも膝が痛いとかっていう方は、関節の問題だったりしますね。

 

あとは足の裏も見ておきますか。
押して痛いとかはないですよね?

 

 

河野
そうですね、特にないですね。

 

野口さん
了解です。
もう一回立って、ちょっと足踏みしてもらっていいですか?

 

ありがとうございます、ちょっと右向いてもらっていいですか?

 

今度は左向いてもらっていいですか?
ふむふむ。事前に言ってた、外くるぶしの下が当たるっていうのの原因はだいたいわかりました。

 

河野
お、凄い。シャーロックホームズみたいw

 

野口さん
いやいや、そんなスキルじゃないですよw
ちょっと足をグーパーしてもらっていいですか?もっとぎゅーっとしてもらって。

 

河野
あれ、これ全然できないなwつりそうw
河野
これが限界ですw足がつりそうですw

 

野口さん
あ、ほんとですか?w
一応どこで曲げてるか見ることで、骨の長さ、関節の位置がわかるんですよね。

 

はい、じゃあ今回は木型を作るってことで、足の検査自体はこれでおしまいです!

 

 

計測数値はあてにならない?

野口さん
で、私はあんまりフットプレスは信用してないんですけど、まあデータとして残るので一応。可動域とかの確認の方が重要だと思ってて。

 

 

参加者
フットプリント信用してないのはなんでなんですか?

 

野口さん
これ、一瞬なんですよ。
で、平らなところって外にほぼ無いんで。路面って、建物の中ぐらいしか平らなところないんですよ。

 

一瞬の状態を相対的に見てなんですけど、関節がどう動くかの可動とか、緩いかとか、どういったところにトラブルがあるかとか、っていう情報の方が僕にとっては大事ですね。

 

河野
たしかに平らな場所歩くとか、営業しててそうないもんな…計測をいかに正確にするかとか思ってたけど、そーじゃないんだな!勉強なる!!!

 

野口さん
計測してみて、「扁平足です」「アーチが高いです」「ここに圧力が高いことがわかりました」っていうのは、その前にしてた診察の裏付けとしての確認みたいなもんですね。

 

足の状態をみて、足の動きをみて、左右でアラインメント(注:骨の並びのこと)も違うので、右のほうが加重した時に外側にぐっと倒れこむんですよ。

 

その原因がわかったので、まぁ画像で確認するってことはしますけど、別になくても足見て確認はできてるので、なくてもいいって感じ。

 

ただ木型を作るので、今回はフットプリントも取りました!

 

河野
原因ってなんだったんですか?

 

野口さん
母子(注:おやゆび)の位置ですね。中足骨の位置関係がちょっと、数ミリ、左に比べて右のほうが下に下がってるんですよ。

 

足の骨の種類(※2)

 

野口さん
つまり、ご自身でわかんないかもしれないですけど、足の裏にここにタコができてるんですよ。これ左にないんですけど。この母子の位置が前から見た時に全く同じ位置にあるわけじゃなくて、ちょっと下に下がってるんですよ。

 

なので加重した時に、外側に倒れるんですよね。その時に摩擦がコンマ何秒分だけ多く発生するので、ここにタコができるっていう

 

一同
へぇーーーー、ふーーーん!
河野
数秒の摩擦…細かい…!すごい!足を知るってこういうことか…!

 

野口さん
あとは外くるぶしが当たる理由って、踵骨の骨形状的に、ここに筋肉の層に腓骨筋群っていうのがあって、そこの滑車になってる部分があるんですけど、その部分が人より出てる人とかもいるので、そういう方は当たりやすかったりとか。

 

足の骨の名称(※3)

 

腓骨筋(※4)

 

野口さん
あとは、骨が当たってるってよくいわれるとおもうんですけど、実は靭帯の、骨ではない軟部組織の張り出しが強かったりする人もいるので、そう言ったくるぶしが当たるっていうのを問診でお聞きした後に、その原因は何かな、どこにあるのかな、とか考えますね。

 

かかとが当たるから広げましょうじゃなくて、原因がわかってれば対策も取りやすいんですね。

 

で、今の情報っていうのは、木型の中底の設計とかに活かしたりします。そんなに変形が強い足ではないので、そんなに気にしなくてもいいとは思いますよ。既成靴履いてて痛いっていうのがなければ、そんな病的ではないですね。

 

河野
おお…ここのパートは専門用語めっちゃ出てきた…でもそりゃそうだよな。足に悩みがある方に向けた靴を作るわけだから。これを機に勉強してみよう!

 

河野
親指の下が下がってる、っていうのはどういう原因なんですか?

 

野口さん
なんでしょうね、骨の個体差とかもあるんで。右手と左手の大きさが違ったり、筋肉のつきかたが違あのと同じような感じですね。明確な理由まではわからないです。

 

それでは靴下履いてください!もうちょい細かい計測をしていきましょう。

 

 

参加者
かかとはどこを測ってるんですか?広いところですか?

 

野口さん
広いところっていうか、かかとで絞るところを見ますね、踵骨って割と大きいんですよ。足部の中で一番大きな骨で、骨形状的には、絞っていいところと絞っちゃだめなところがあります。脛骨神経とか動脈とかも走ってるので、あんまりグイグイ絞ったりしないほうがいいというか、意識しないといけないところですね。

 

そうじゃなくてわりとぎゅっと絞れるところとしては、お肉とか脂肪帯っていうのはプレッションをかけていけるんですけど、骨って押してへこむわけじゃないのでそうじゃないところと分けて考えるために部分的に測る場所を変えてます。

 

参加者
足の中の構造がわかってないと難しいですね…

 

河野
確かに…ただピタッとキツめに合わせりゃいいわけじゃないのか。特に”ダメなところ”の判別が難しいけど重要なとこだな…

 

野口さん
ここからは立って加重時も計測します。

 

 

参加者
1の甲、ボールガースって人によって角度が違うんですかね?

 

ボールガース(※5)

 

野口さん
いや、ここはあんまり変わらないというか、変えないですね。まぁつまり、木型に反映させる意味がある数値は取るんですけども、形状とか。そうじゃなくて変な話、お肉なんてある程度絞り込めちゃうので、数字はあくまで数字ですね。

 

河野
うお…この超絶重要そうな響きのあるワード!!
「意味のある数値。」ただとりゃいいってもんじゃない。

 

野口さん
骨の金属みたいな硬いものの幅って大事で、幅が合ってないと入らないとかトラブルが起こってくるんですけど、お肉とか脂肪帯ってそうじゃないので、意識しなきゃいけない数字とそうじゃない数字ってやっぱりありますね。

 

あと、数ミリ測るポイントが変わるだけで、計測結果も1〜2ミリは変わってきちゃったりもしますね。

 

あと前足部は関節運動が伴うんで、関節の動きとお肉の広がり、靭帯のゆるさとか、複合的ないくつかの因子があって、数値が変化するんですけど、かかとに関しては骨が動いたりとか関節運動とかはないです。基本的に軟部組織の変化だけで変化します。

 

大切なのは、数字の変化の意味、ですよね。
なんでこの数値が変わったのか、っていうのも大事というか、覚えといたほうがいいなーなんて僕は思ってます。

 

河野
キター!!
数値の意味、を考えるタイムだ、ここは!
そのものより、どう変化してるか!!!
なるほどなー。

 

 

野口さん
当たり前ですけど、足の数値ってむくみとか靴下とか運動量でも変わるので、これも数値をびんびんに合わせてっていうのは僕はあんまり考えないですね。

 

足の状態は変わるので、変な話、いま測った一瞬の数値だけを重要視してそれに合わせちゃうと、他の状態に合うのか、っていう感じになっちゃうので。どっかの足の状態で、こっからここの範囲っていうのを掴むのが大事かなと思いますね。

 

あと、数値は変わっちゃうので、加重時と非加重時のメジャーのテンション(張り方)を同じで計測するようにして、ボール・ウエスト・インステップの数字の変わり方を見て、どういう形状なのかっていうのは見ますね。

 

つまり、計測値は変わるんですよ。ただ急に、足のウエストがぼこっと膨らんだり、ボールだけ細くなったりってことは同じ足であれば、無いという仮説のもと、数字の動き方ですよね、どこが数値が大きくてどこが小さいのか、っていうのを見るようにはしてますね。

 

河野
数字の変化の意味、ってこういうことか!わかりやすい!腹落ち!!

 

野口さん
あ、フットプリントでさっきの確認(問診や可動域などを触診した感覚の確認)の話をさせていただくと、これはわかるわからない、人にもよるんですけど、前足部の加重でいうと右と左を比べた時に右は小趾のほうに加重が傾いてるのがわかりますよね。

 

 

 

野口さん
ただ、極端な言い方をすると、下を向いた時にちょっとふらついて右側に、っていうのも全然あるんで、これは完璧な裏付けっていうとそこまで僕はあんまり…

 

これはこうなんです!、っていうのは簡単なんですけど、僕は参考程度に、って感じですね。

 

やっぱり触診の時に感じた、母子が数ミリ下がってるとかのほうが大事で、関節が硬いのか柔らかいのか、柔らかければ戻っちゃうので。母子が一番可動性も大きいですし。

 

検査としてはこれで終わりです!

 

画像の検査(フットプリント)と、足の状態の触診、可動域テストを行って、だいたいわかったので、これで例えば僕が持ってるベースの木型を修正して作っていく感じになります。

 

ありがとうございました!

 

一同
ありがとうございました!!!

 

 

野口さんへの質問タイム!

 

野口さん
質問あったらどうぞ!

 

参加者
フットプリントに母子が出てこないってことはよっぽど小趾に寄ってるってことですかね?

 

野口さん
いや、そんなに。さっき言ったようにこれに全てが出てるわけじゃないので。例えば出てくる人もいるし、出てこない人もいるし。ちょっと動くと変わっちゃうんですよね。

 

例えば、フットプリントを敷いといて、その上を歩かせる人も見たことあるんですけど、同じものでも見ようとしてるものが違う感じですよね。

 

参加者
木型は加重時と非加重時の計測の中間値で作っていくんですか?

 

野口さん
いや、中間値というわけではないですね。
使う数値と使わない数値もあるので。数値の変化量を見てるというか、つまり河野さんの1つの仮説として、足の状態として数値で表現できるものはこっからここまでの幅の中、っていうと加重時と非加重時の数値は参考になりますよね。

 

 

 

野口さん
あとは当然、なんか荷物持ってるとか、静止立位とは変わってくるんですけど。その静止立位時の数値が今回のだ、っていう認識で、歩行時にはこれがどう動くか、足の状態が左右で違うと歩行の時にどう動くかっていうのがわかるわけですよね。

 

河野
そうか、歩行時も考えなきゃいけないのか!足は屈折運動が多いからな、大切か!

 

野口さん
わかるというか、推測することができますよね。勘ではなくて、こう動くっていうのが、バイオメカニクス的にはっきりわかるんで、それを元に木型に反映させたり、させなかったりですね。無視しちゃったりも当然しますので。

 

特にトラブルがない場合とかは、反映させないとかもありますし。何を作るか、例えばこの数値を元にスニーカーの木型を削るかっていうのと、ぴんぴんのドレスシューズの木型を削るか、っていうのでも変わってきますね。

 

あとはどういう素材を使うのかとか、結局靴を作るための土台でしかないので。やっぱり木型ってどういう靴を作るか、っていう一番重要なパートってだけなんで、製靴技術に依存してるんですよね。形状自体が。

 

足の形ではないし、完成した靴が足に合うのが本来であればいいはずなので、極端な言い方をすると靴のデザインとかによっても、数値をどう活かすか、っていうのが変わってくるなと思ってやってます。

 

 

終わりに

皆さん、いかがでしたでしょうか?
ボリューム満点、お腹いっぱいな情報量だと思います!
木型のオーダーが少しでも身近に感じられたら嬉しいです!

 

“目からウロコ”なことがいっぱいあった学びの多い時間でしたし、色んな方ともお会いできるこういった場はこれからも設けていくつもりなので、面白かった!という方は是非次回の参加をお待ちしてます!

 

次回イベントのお知らせ

2018/9/7(fri)19〜21時 @秋葉原

 

 

参加者残りあと1名のみ枠が空いてます!!
今回は野口さんの勉強会をメインに、出来上がってきた私の木型の確認も行いますので興味がある方はお待ちしてます!!

 

※募集は終了いたしました!ご応募誠にありがとうございました。

 

※1 写真引用:アシックス – 3次元足型計測
※2 写真引用:ブリオン株式会社
※3 写真引用:両国きたむら整形外科 – 踵骨とは?
※4 写真引用:土井治療院 – 腓骨筋群
※5 写真引用:シューフィッターが語る足と靴【共有ブログ】 –  足囲(そくい)について

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