家庭用ミシンで革靴のアッパーを縫う方法

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こんにちは、MSY代表のブン(Twitter)と申します。
今回は、家庭用ミシンで革靴のアッパーを作る方法をご紹介いたします。

 

と言っても「専用の特殊なミシンが無いと無理なのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。私自身がそうでした。
ところが、いざやってみると作れてしまいました。
※もちろん、プロが作るそれには到っ底、及ばないです!

 

小学校以来、ミシンに触れたこともなかった私でも出来ましたので、革靴にご興味のある方は、ぜひチャレンジしてみてください!

 

 

出来上がったのは、こんなブーツです。
底付けは真鍮釘留めです。

 

 

脱ぎ履きのしやすいようにファスナーを備えました。
ソールには意匠&滑り止めとして編み込み模様を入れています。

 

 

では早速、「どんなミシンを選べばいいのか?」からご紹介いたします!

 

ミシンの選び方

革靴のアッパーを作るためにはどんなミシンが必要なのでしょうか?

 

家にあるミシンでOK

もしご自宅にミシンをお持ちなのであれば、まずそちらで試してみましょう。

 

!!注意!! 
・動作保証対象外の可能性があるので、ご自身の判断でお願いいたします。
・故障や想定外の事象についてMSYは責任を取りかねます。

 

あくまで私の個人的な経験に基づく話ですので、ご了承のほどよろしくお願い致します。
私が本稿執筆時点で使用しているのは、、もともと子供の幼稚園のランチョンマットを作るために購入した安価なミシンです。2万円以下という・・・。

 

BROTHER HS201

 

では、お手持ちのミシンで革靴のアッパーを縫うために、ちょっとだけカスタマイズをしましょう。

 

 

家庭用ミシンでアッパーを縫うためのカスタマイズ

そんな大げさなモノではないです。
どれも数百円のアイテムです。ところが効果は絶大ですのでぜひ!

 

ミシン針

布用の針だと、革に刺さりづらいことがあります。
そこで、針はレザー専用針に交換しましょう!私はこちらの太さ#11を使用しています。

 

 オルガン 〔型番:HA×1LL-ミックス〕ミシン針レザー用針

 

あまり厚い革や固い革だと、ミシン側に負担がかかるかもしれません。
その場合は、革を水で濡らして柔らかくする方法もあります。

 

抑え

アッパーの縫う場所によっては、抑え自体が邪魔になってしまうことがあります。
ここはできるだけ小ぶりな抑えにすると取り回しが楽です。
交換方法はミシンのマニュアルをご参照ください!とても簡単だと思います。

 

KAWAGUCHI ミシンのアタッチメント 直線用 2mm押え

 

メンディングテープ

革と抑えとの摩擦が強すぎて上手く縫えないことがあります。
そんなときは抑えにメンディングテープを貼ってみましょう。
摩擦が軽減されて魔法のように、、は大げさですが、ミシン送りがスムーズになります。

 

3M スコッチ テープ メンディングテープ ディスペンサー付 18mm

 

抑えのほうに貼り、

 

 

はみでたテープはカッターで切り落とします。

 

 

かなりベタつく革を縫った際、こんな感じでした。

 

メンディングテープあり:白い糸
メンディングテープなし:下のガタガタの縫い跡

 

シリコンのり

こちらも摩擦を軽減するため。主に針に塗ります。
革によってはシミになる可能性もあるのでハギレでテストをオススメします。

 

 ソーイング用シリコン剤

 

カスタマイズと言っても、このくらいです。
では、ついに縫っていきましょう!

 

 

縫い方

大まかな手順やポイントをご紹介します。
※ミシン自体の基本的な使い方について不明な方は先人たちの書籍やネットをご参照ください!

接着

アッパーとライニングを合わせて縫う前に、接着します。
接着剤はゴムのりや、接着ラバー(スリーダイン)など使いやすいものでOKです。

 

 

ガイドを引く

ミシン針を落とす位置の視界がオープンではないため(抑えがあるので)、縫い進めてから振り返ってみると縫い目がガタガタということも・・・。
少しでもキレイに縫うためには、針を落としたい場所に出来るだけクッキリとガイド線を書きましょう。

 

銀色のガイド線

 

 

 

ガイド線の上を縫い終った状態

 

 

ガイド用のペンは、アッパーによって使い分けます。

 

スムースレザーの場合

オススメは、銀色の極細ボールペンです。
通常のレザークラフト用の銀ペンよりもかなり細いです。

 

パイロット ノック ゲルインク 極細 ボールペン Juice Up 04 シルバー (LJP-20S4-S)

 

シボ革など書きにくい革の場合

アッパーにメンディングテープを貼り付け、その上に黒ボールペンでガイド線を引くのが便利です。

 

 

※写真はデニム生地のアッパーです
アッパーへのダメージを防ぐため、事前に粘着力を弱めておくことを忘れずに。

 

これで、縫うためのガイド線を引くことができました。

 

ゆっくり縫う

コツは、焦らずゆっくり縫うことです。直線であればフットコントローラーで一気に縫い進められますが、慣れるまでは地道に手回しでひと針ひと針進めるのが確実です。
特に曲線はこまめに抑えを上げてガイドに沿うように方向を微調整すると良いです。

 

 

続いて何点か知っておきたいポイントをご紹介します。

 

 

これは知っておきたい

当然ながら、プロが使うミシンとは機能的に及ばない部分が多くあります。

 

工業用ミシンよりテンションが弱い

 

だからといって諦める必要はありません。
もし、テンション(縫い目の引っ張り強度)が弱いことで不都合を感じた場合は以下を試してみましょう。

 

・返し縫いを始め&終わりだけでなく、全部に施す。
・貼り合わせの面積を多くし、接着剤を強力なものにする(底付け用接着剤)

 

 

「底付け用の接着剤」とはたとえばこちらです。

 

ノーテープ9820NT

 

貼り直しは難しくなってしまいますが、強度面では格段に上がります。

 

平面的に縫えるよう工夫する

平ミシンの構造上、立体的に縫い進めるのが難しいです。
そこで、出来るだけ平面的なパーツとして縫い、組み立てる方法が有効です。

 

例えば内羽根ストレートチップであれば、

<方法A>
1.アッパーの羽根とバンプを縫い合わせる
2.ライニングの羽根とバンプを縫い合わせる
3.アッパーとライニングを縫い合わせる

 

<方法B>
1.アッパーの羽根と、ライニングの羽根を縫い合わせる
2.そこへ、アッパーのバンプを縫い合わせる
3.そこへ、ライニングのバンプを縫い合わせる

 

方法Bの方が平面的に作成することが出来ます。後述する書籍「紳士靴の仕立て方」も後者の方法で書かれているので、是非参考にしてみてください!

 

 

さいごに

専用のミシンや工具がないからといって靴作りを諦めてしまうのは本当に勿体ないです!ご興味があれば、革靴を作るという趣味に足を踏み入れてはいかがでしょうか。

 

オススメの書籍

作り方については書籍「紳士靴を仕立てる」をオススメします!MSYではもう何度もご紹介させていただいていますが、本当にこの本は素晴らしいです。

 

紳士靴を仕立てる

 

家庭用ミシン以外の工具

今回、底付け作業には100円ショップ工具をかなり多用しました。
とはいえ、厚い革を切る際に工作用のカッターでは作業効率が悪いですので、革包丁だけは購入することをオススメします。まずはこちらで十分です!

 

オルファ(OLFA) 別たち 56B

 

 

底付け作業をダイソーの道具だけで行った検証記事はこちらです。

靴作りの道具を100均(ダイソー)の道具だけで揃えるといくらになるか?

 

レザーアワード2020に応募しました

家庭用ミシンなどを使って、素人でも気軽に楽しめるというテーマで今回のブーツを応募しました。作品のタイトルはMake Shoes Yourself !!
よろしければ御覧ください。

 

ジャパンレザーアワード2020 応募作品

 

なにかご不明な点や相談はお問い合わせからお気軽にご連絡ください!

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