木型を職人にオーダーしたら、足のことを解剖学の視点から詳しく教えてもらえた。

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皆さんこんにちは!河野です!

 

今回は、私がオーダーした木型が出来上がったとのことでその確認にお伺いしたのですが、
「せっかく木型をオーダーしたんだから足のことも詳しく知っておいた方が靴作りに役立つはず!」
との職人さんのご好意で、先日同様イベントを開催して、勉強会形式で色々教えていただいた時のことを記事にしました!

 

今回もお願いした職人さんは、野口達也さん(@zucchinitatsuya)です!
※詳しくは前回のイベント記事をご確認ください!

 

 

ではさっそく、イベントの様子をお届けします!

 

野口さんって何やられてる方ですか?

 

河野
あとお一人来られるまでもう少々お待ち下さい!
あ、先になにか野口さんに聞いておきたいことある人とかいます?

 

参加者
あ、野口さんって何をやられてる方ですか?

 

野口さん
僕ですか?w
確かにめっちゃ怪しい人みたいにみられてますかね?

 

河野
紹介してなかったwそりゃそうなるかw
野口さん、すみませんw

 

参加者
なんとか士、ってやつですよね?

 

野口さん
そうですね、じゃとりあえず自己紹介を。

 

僕は「義肢装具士」って仕事をしてます。
義肢装具士っていうのは、あんまりわからないと思うんですけど、もともと僕今38歳なんですけど、18歳ぐらいから靴の業界に入って勉強し始めて、色んな靴の教室とか、型紙の職人さんだったりとかいろいろな人について勉強をして、木型屋さんとかも行きつつ、だんだん足に興味が出てきて義肢装具士免許を取ろうかなと思いました。

 

義肢装具士免許っていうのは、日本でいうコルセットとか義足とか、リハビリとか治療のために器具とか、道具が必要になったりする人向けにアイテムを作る国家資格ですね。

 

だから足底板(インソール)とか、おばあちゃんがかかとが痛いって病院行って作ってもらってたりすると、だいたい義肢装具士が関わってたりとかしますね。

 

あとは腰の手術をして、オーダーのコルセットを作ったっていうと、義肢装具士が作ってるような感じですね。頭の保護帽から外反母趾の方がつま先に挟むクッションまで、実は義肢装具士が関わってたり、設計をしたりとかしてます。日本全国にいますね。

 

で、今も臨床に従事してます。
義肢装具士って初めて聞きました?

 

参加者
初めて聞きました!

 

野口さん
ですよね!
で、今日は解剖学っていうテーマで、そもそも解剖学ってなに?っていうのはあると思うんですけど、解剖学から話をしたいなと思ってます。

 

解剖学って色々あるんですよね。血管学とか、筋肉も色んな筋肉があったりして、例えば今日は関節の動きの話もするんですけど、肩関節学会とか膝関節学会とかフォーカスして、このパーツはどういう形になってて、とかっていう話が解剖学ですね。

 

 

河野
学会が各関節毎に?wすげーーーw「肩関節の方会場こちらでーす、膝関節の方はもう少々お待ち下さーい」みたいな光景を想像すると笑ってしまうけど我慢ww

 

野口さん
今日は骨の名前とか、テーマとしては「靴の適合に関係のある骨と関節」について、こういう関節があって、こう動くから適合でここ気をつけなきゃだめだよ、みたいなことを僕が解説したいと思ってます。

 

運良く今日は皆さん、靴脱いでスリッパになりましたし、もしよかったら足のこと知らない方がほとんだと思うので、自分の足を動かしてみたり、周りの人の足を触らせてもらったりして、「あ、こんな感じなんだ」っていうのを見たりすると、理解が深まるんじゃないかなと思います。

 

今日出てくる足はだいたい右足です。
模型も右足が多いですね。

 

 

靴木型設計のための解剖学、スタート!

 

野口さん
では、いよいよ本題に入っていきます!
今日は「靴木型設計のための解剖学」というテーマで進めさせていただきます。

 

野口さん
今回は”木型の適合”なので、指の骨の部分は捨て寸とかで考慮できて適合そのものを考える機会も少ないので、今回の話からは外しちゃいます。

どっちかというと、かかとなどの後足部の方が靴の適合には重要視されますね。

 

大まかな流れとしては、まず足をみている視点と使われる専門用語をご説明し、あとは足部の動きと関節、個々の骨の形状と特徴を説明するところまでを第1部は終了です。

第2部は、第1部の内容を今回の木型にどう落とし込んだのか、っていうのを解説させて頂きます。

 

質問とかあったらその場で止めて聞いていただければ、お答えできるかなと思いますので、どんどん発言しちゃってください。

 

それでは早速資料を使ってご説明を開始します!

 

 

野口さん
まずは視点の話ですが、
横の面は矢状面(しじょうめん)、足でいうと外とか内側とかっていうやつですね。
あとは横断面(水平面)、つま先側かかと側から見るときは前後なので前額面(ぜんがくめん)って言います。

 

 

野口さん
ここに動きが合わさってきますが、水平面の動きでいうとフリスビーを投げるみたいな動きとかですね。

矢状面でいうと、つま先が上下する動きを底屈(下向き)背屈(上向き)っていいます。肘で行ったら「伸展屈曲」とかっていうんですけど、聞いたことあります?

 

河野
「長座体前屈」しか聞いたことないっすね!

 

参加者
・・・

 

野口さん
・・・あ、そんな言葉があるんですかね。

 

河野
スポーツテストとかでありませんでした?w

 

河野
考えずに思いついたことそのまま言って、完全にスベったみたいになってるーwww

 

野口さん
あー、体育の授業とかで出てくるかもしれないっすね。側屈(身体を横に倒す動き)とかね。足でいうと、底屈・背屈が矢状面での動き、ですね。あ、これあとで出てくるんで、わかんないときは言ってくださいね!

 

水平面はさっきフリスビーの例でもいいましたが、内転・外転の動きですね。つま先が左右に動く感じです。ひぐちカッターの動きですね!

 

河野
・・・誰もふれなーーーいww
ツッコんだ方がよかったかwタイミングを見失ったw

 

野口さん
そして、前額面での動きが内反・外反ですね。

 

足の動きをこの3面上で立体に分析して、関節の動きを捉えてます。つまり、3ついっぺんに動くパターンもあるわけですね。足の動きって立体的なのでボールジョイントみたいな動きをするのをなんとなくでいいんで、理解しといてください!用語としては、回外・回内とかって言い方をしてます。

 

数年前に、日本ではこの用語それぞれの呼び方も統一されたんで、興味ある方はぜひ覚えてみてください。

 

とりあえず足は「複雑な動きをしてる」ってことですね。膝関節みたいに曲げ伸ばしだけじゃなくて、立体的な動きをしてるよってことです。

 

 

実はめっちゃ複雑な足と関節の構造!

 

野口さん
次は足部の構造ですね。皆さん足には3つのアーチがあって、みたいな話って聞いたことありますかね??

 

河野
自分は前回の木型会まで知りませんでしたw
皆さんいかがですかね?

 

野口さん
あ、ほんとっすか?w聞いたこと無い方どれぐらいいます?
(挙手)あ、半分ぐらいは既にご存知ですね!

 

まず、片足には30個弱ぐらいの骨がありまして、関節は33関節かな。非常に骨と関節の数が多いです。

その構造をアーチとかっていうんですけど、資料のやつは右足を矢状面(内と外)から見た図ですね。
内外の山なりになっているラインを、それぞれ内足縦アーチ外足縦アーチって言います。横アーチは中足骨を繋いだラインの部分ですね。(資料左上)

 

各アーチには「キーストーン」というものがあります。かまくらとか作った事ある人います?最後にはめる要石っていうのがあるんですけど、それのことですね。アーチの頂点にあります。

 

かまくらの場合は大きな形の変化って無いと思うんですけど、足の場合は形状に変化があります。
例えば、骨の配列とか関節の連結の硬さとかによって、人によってはトラブルが起こったりとか、体重がかかった時にアーチがくずれちゃったり、逆に骨配列の関係でアーチがあがっちゃって立った時にハイアーチにみえる足とか、個体差が結構あったりします。

 

関節の位置関係とか柔らかい硬いっていうのが極端だと、内側にくずれちゃう人は親指にたこができるとか、指が変形しちゃうとかを引き起こしたりします。つまり、変な負担のかかり方はよくないってことですね。で、それは個体差によって変わってくると言うことを覚えておいてください。

 

参加者
すみません、骨の数が人によって違うっていうお話があったと思うんですが、足りないっていうわけではないんですか?

 

野口さん
一番ポピュラーな数の違いは、親指の下に種子骨ってよばれる、滑車のとこにスムーズに動くための靭帯の中にある骨があるんですけど、これが2つあることが多いんですが1個だったりなかったりする人もいるんですね。

 

参加者
結構ない人っているんですか?

 

野口さん
必要な場合にしか触らないんであんまりわからないですね。ただ、触ればわかります。種子骨障害の方とかもいらっしゃるんですけど、僕らが足を見る時って、問題があってそれを解決するために検査をするんですよね。

だから、かかとが痛いっていう人の訴えに対して、種子骨をグリグリ触ったりすることはあんまりないですね。「なにさわってるんですか?」みたいになっちゃうのでw

 

レントゲン取るまで、そもそもないことを知らなかった、っていう人もいたり別に困ったりすることはないですね。

 

参加者
ありがとうございます!

 

 

野口さん
足部の構造はアーチ構造がよく言われるんですが、僕は靴木型の適合を考える上で重要だなと思うのが、やっぱりかかとですね。

(資料中央)ピンク色の部分が筋肉ですね、その内側にあるのが骨で、足の裏側につぶれた胃袋みたいにしてあるのが脂肪です。

 

見たとおり、かかとは脂肪体が結構多いんですね。かかとの形状、自分で触ってみると丸みがあるって思ってる人が多いと思うんですけど、骨の形でいうと中心を荷重線として、内外で結構形状差があるんですよね。(資料左)

 

あとは、脂肪体なので、人によって柔らかい人もいればがっちり筋肉質な人もいます。あとは靴の形状でいうと、載距突起(さいきょとっき)マニアがいるぐらいの有名な骨形状があるんですけど、それは置いときましょうw 河野さんも当たるって言ってたくるぶしの下があたるっていうのも、骨が張り出してしまっているのか、足が外側に倒れてしまっているのかでも違いますし、かかとの形状って大事なんですね。

 

参加者
荷重線から外側にずれてるといいんですか?

 

野口さん
これは歩行の話になってくるんですけど、歩く時にかかとから地面に着くじゃないですか?その時に、歩くって身体を効率よくなるべく前に進まないといけないし、路面ってでこぼこだったりしますけど、その時に足の機能性が求められるんですよね。

 

片足が地面を蹴り上げて宙に浮いて、その間は反対の片足が体重を支えて、それが安定しているからこそより前に踏み出せる、っていうそれぞれのフェーズで求められる機能があるんですけど、縦方向の力があまり大きくならないようにする機能がかかとの形状に現れてるんですね。

 

膝とかも体重がかかった時に軽く曲がったりとかして、衝撃吸収をする動きをするじゃないですか。キャッチボールする時に腕の関節が全部固まってたら、ばしって強い衝撃がきますよね。回内をしながら体重を受け止めてあげる、っていうのがスムーズに歩くために必要なんですね。その動きを作るために外側にずれてかかとがある感じです。

 

もし荷重線の真下にかかとがあったら、地面が凸凹してる時に回内の動きをするか、回外の動きをするかわからなくなっちゃうじゃないですか?外側についてることによって、回内の動きをすることができる足部の構造になってるわけです。

 

 

河野
踵の骨が真下に来ちゃってる人とかもいるんですか?

 

野口さん
それはないですね。僕が話してるのが、基本はかかとは1つで指は5本で、っていう人を対象に話してるので、そういった特殊なケースは除いて話していきます。

 

あと、足の構造は個人差もあるんですけど、年代差もあるって言われてますね。構造自体は成長期に発達するっていわれてて、生まれてすぐは足根骨(そっこんこつ)とかってほとんど軟骨だったりとか、アーチの発達を促すインソールがあったりとか、それがだいたい15歳ぐらいまでって言われてますね。当然、たくさん歩いて運動して、って人とずっとゲームしてる人だと、発達部分で違いが出てくるっていうのは言われてますね。

 

例えば60歳台とかだと下駄履いてたりとか、自転車買ってもらえなかったとかしますし、運動量は今はだいぶ減ってきてると思いますね。そういった年代差は足の構造に出てくると思います。

 

河野
確かになー、ゲームをやるなとは言わないけど、自分の足を使って歩いたり運動したりする時間は自分の子供にも長くとってあげられるようにしたいな。

 

 

野口さん
次は関節の動きですね。非荷重時の、矢状面での内外からみたイメージです。やはりこれも靴木型への適合だったり、歩行を考えると重要なポイントですね。

 

実際こんな風に歩いてみると(野口さん歩く)蹴り上げのときに無意識で動いてる部分ですね。だいたいそれぞれ、資料内に記載の角度ぐらいを目安に曲がるようになってます。

 

ただ、これは裸足の状態で、です。靴を履いた状態だと10°ぐらいでも歩くことは可能なんで、その分ウォーキングシューズみたいな底が転がるように動く靴で補完するとか、他の部分の関節で補完したりして、歩けるようにするんですね。代償運動って言います。なんとか身体は頑張って、効率的な歩行をしようとします。

 

河野
全く内容に関係ないけど、今回も野口さん五本指ソックスだ!wやっぱり健康にいいのかな?

 

野口さん
足首が硬い人は、すぐかかとがあがっちゃったりとかしますね、アキレス腱が硬い人とか。変な話、全部の関節が0°で固定されて曲がらなかったら、確実に歩けないですよね。

 

 

野口さん
次は前額面の動き。これも非荷重のときです。
上の写真は足首の回内・回外の動きですね。足首って、複合関節なんですよ。つま先を上げ下げする関節と、ボールジョイントみたいに回す関節は別物なんです。立った時でいうと、アーチが下がるような動きですね。曲がる確度が、こちらも資料に記載の角度が目安になります。

 

あと、つま先が目立っちゃうんですけど、スネとかかとを固定して足首の動きを見てるので、前足部の動きは考慮に入ってません。

 

 

怒涛の骨形状メドレー!

 

野口さん
ここからは骨の形状の話になるので、さくさくいきましょう。
まずは距骨(きょこつ)と言って、一番奥まったところにあります。スネからの荷重を受けるものです。筋肉はないんですけど、ボールジョイントみたいな立体的な動きをします。色んな骨の連動で歩行が成り立ってるんですね。

 

 

野口さん
次に、大きな骨、踵骨(しょうこつ)です。さっき出てきた内外の形状が違うやつですね。踵落としとかで使われる骨ですねw軟部組織が周辺に多くて、形状の変化が大きい部分です。

 

 

野口さん
次は舟状骨(しゅうじょうこつ)、聞いたことないですよねw内足縦アーチのキーストーンですね!触るとすぐわかります。ちなみに女性の方が多いです。

 

アーチの低下で距骨の動きを思い出してほしいんですけど、距骨の一個前に付いてるので、同じように回内の動きをするわけですね。ここには筋肉が付着しているんですけど、アーチを支える筋肉に負担がかかると、靭帯が引っ張られて厚く過剰骨になって、出っ張りが強くなっちゃうんですよね。女性とか子供の方が関節の繋ぎがやわらかいので、張り出してきやすくて、靴を履いた時に当たったりします。

 

参加者
過剰骨って治りますか?

 

野口さん
過剰骨は手術で摘出するしかないですね。除去するしかない。インソールとかは回内で当たる部分を緩衝したり、硬い芯材を柔らかくしたりとかして、受け止める感じですね。

 

 

野口さん
次、立方骨(りっぽうこつ)は外足縦アーチのキーストーンですね。内足よりは構成要素が少ないです。歩行時の機能性は非常に重要な骨ですが、奥まってて分かりづらいです。木型の面でもあまり考慮しなくてもいい部分です。

 

 

野口さん
次は 1st ray です。中足骨と内足楔状骨を1セットで考える部分で、あんまり可動性はないですね。
隆起としてぼこっと出てきちゃうこともある部分です。動きは上下だけじゃなく、扇をあおぐように外側へ広がる動きも混ざって立体的になります。

 

 

野口さん
それに対して 2nd、3rd は両サイドを挟まれているので、横への動きは少なく、上下の動きのみになります。

 

 

野口さん
4th も両側を挟まれているので動きは同じですが、楔状骨がなく、中足骨のみで構成されています。

 

 

野口さん
5th は 4th と同じく中足骨のみで構成されています。動きは第一と同じように、立体的な動きをします。背屈・底屈だけでなく、水平面の動きも含まれる感じですね。体重がかかった時に前足部が広がるやつですね。上から見た時にわかりやすいと思います。第一より、第五の方がこの広がる幅は広いと言われてます。

 

河野
荷重した時って贅肉が広がってるんじゃなくて、骨が広がってるんですね!

 

野口さん
イエス!!!

 

河野
野口さんのイエスいただきましたー!w
なんか嬉しいw

 

野口さん
いいこと言いましたね、次のまとめで出てくるんですけどw

 

河野
次に言うやつだったんかーいw
早とちりw

 

 

野口さん
ここで書いてるのは、荷重時の足の形状変化、ですね。両と質。荷重時と非荷重時の、あくまでも相対的な比較として見てくださいね。

 

今河野さんから質問あった、荷重時は軟部組織だけじゃなくて関節が広がってるんですか、という部分ですが、前足部は軟部組織より関節の方が影響が大きいんですね。中足部は関節運動が多くなく、軟部組織も他と比べると大きな特徴はないので、荷重による変化は小さい部分です。後足部は関節運動は少ないですが、先程お見せしたとおり、軟部組織が多かったりします。

 

部位によって荷重時の変化、その質が違うってことを理解してもらえたら。この前の計測時にも言いましたが、計測値が変わった時に、その意味がなにかっていうと「関節運動を伴う変化」なのか「軟部組織の変化」なのか、っていうのを理解しないといけないかなと思います。

 

はい、第一部はここまでです!あとスライド10枚ぐらい、第二部に入っていきますね!

 

河野
第一部で既に前回のボリューム超えてるんじゃないか??
全部書き起こせるか不安ww

 

 

解剖学の視点を実際に木型に落とし込むとどうなる?

 

野口さん
今回、河野さんの木型を削って、どのように落とし込んでいったかを河野さんに説明しなきゃいけないので、それをまとめた資料になります。

 

今まで説明してきた解剖学的な部分っていうのは、科学的に解明されていることなので、僕が考えてっていう部分じゃないんですよね。逆にこれから説明していくことは正解っていうのはないので、あくまでも僕の考える仮設と検証結果をお伝えしていきます。

 

 

野口さん
まず大前提として、これまでの説明でも話してきましたが、「足型」と「木型」っていうのは違うものなんですよ。ただ足の形に合わせればかっちょいい木型ができるかというとそうじゃないです。足の形と形状は個体差や年代差があります。河野さんも左右差がありましたもんね。

 

そして、トラブルが発生するのはたいてい歩いている時なんですね。あとは、圧迫が部分的に強すぎたり弱すぎたりすると、問題が起きたりしますね。当然アッパーが柔らかいと大丈夫ということもあるかと思いますが、それが適合が良いとは言えないと思うので、あくまでも木型に特化して考えていければと思います。

 

足のタイプはよく雑誌とかに出てますよね。スクエア型とかエジプト型とか、ギリシャ型とか言われますね。これは、時代の石像の足の特徴からそう呼ばれてるみたいですね。あとはアーチが長い人と指が長い人で、適合が変わってきたりもしますが、僕はそこまで重要視はしてないですね。幅が同じでも指の長さ次第でトウの形は変わってきますね。

 

 

野口さん
基本的には、計測以外に骨とか関節の動きを正確に落とし込んだ方がよい適合になるんじゃないか、と仮設を立てて今回は進めています。よい適合とは、適度に絞り込まれていてトラブルに繋がりにくい状態、のことです。

 

 

野口さん
今回、野口の木型と書いてますが、より解剖学の観点を絞りこんだ木型とそうでない木型で、それぞれチェックシューズを作って比較することで検証を進めてみました。

 

 

野口さん
計測方法は、前回のときにもやりましたが、SOAP(ソープ)っていうテクニックで計測を進めます。日頃の運動習慣がどれぐらいかとか、悩みとかを絞り込んでいく問診(Subjective)から始まります。

 

次の検査(Objective)では、炎症ある部分が熱を持ってるかとか、当たって擦りむけてしまっている部分がないかとか、あとはその場で足踏みをしてもらって動的な動きのなかから特徴を確認します。さっき言った通り、トラブルは歩行時に起こる事が多いので、静的ではなく、動的な観察をより重視しています。検査をしてるとたまに矛盾した結果とかが出てくることもあるんですけど、その場合は動的な評価をより重要視して、負荷がかかってる運動連鎖を分析していきますね。

 

あとは関節の可動域、柔らかさの検査もします。個体差もある部分なので。ニュートラルポジションも合わせて確認します。最後、一般的な計測も行います。

 

その後は評価(Assesment)ですね。どういう運動連鎖を制御すれば、適合していくのかを検査内容から逆算して進めます。

 

最後の計画(Plan)は、その後どういったスケジュールで形にしていくか、とかですね。義足だと納期が決まってたりとか、今回は河野さんがいつ東京出張に来るから、それまでに削ろうとかwあとは今回みたいにチェックシューズを作るのか否かとか、を決めていく部分になります。

 

河野
やっぱりここ大事だなー!普通、温度とかシワの状態とか見ます?wwこの視点は野口さんに会わなかったら、絶対持ててなかったと思う。有り難い!

 

 

野口さん
何をやったか、っていうとこの木型にまとめましたよ、って感じですねw

 

 

野口さん
前足部ではさっきの復習ですが、第五列目の方が大きく水平面で動くので、それが小指側であたらないかとか。あとは適切な締め方でボールジョイントを計測するとかですね。ワークブーツなのか、ドレスシューズなのか、作りたい靴によっても変わってきますしね。ボールガースの部分は、どこにキーストーンがあるのかを見極めながら削っていきましたね。

 

 

野口さん
中足部については、結構絞り込みをしますね。アーチの絞り込みは美観的にも影響があるので、今回はドレスシューズを作られるとのことなので、結構ぴんぴんに絞って削ってみてます。あとはむくみは前足部に比べると、1センチぐらいの変化はざらですが、芯材とかが入る部分でもないので、甲周りはシビアには考えてないですね。

 

参加者
絞り込みの許容範囲って何センチとかありますか?

 

野口さん
僕は、%で絞りこみますね。軟部組織が多いのか、筋肉質な足の方は絞ってもあまり意味がなかったりとか。靴教室とかだとボールジョイントで計測値から1センチぐらい絞るとか言われることもありますが、作りたい靴とかから逆算して絞り込んだほうがいいですね。木型の形状=適合ではないので、この木型が合ったとしてもどんな靴にでも合うわけじゃないので、どんな靴を作りたいかから考えていかないといけないですね。

 

参加者
ありがとうございます!

 

 

 

野口さん
後足部は、かかと周りの張り出しがどうか、っていうのを特に留意して進めますね。河野さんは荷重時における外倒れするような動きの中で当たってたので、張り出し自体はそこまで影響がなかったですね。張り出しがある人はきちんと考慮しないと履いて当たってしまいますからね。

 

骨と筋肉、軟部組織が全体でどう構成されているのか、っていうのを想像できるようになるといいかもしれないですね!

 

河野
足を動かしたり観察したりしながら、この想像をすることが重要なのはめっちゃわかるけど、すぐにできるものではないですねww経験していくしかない!

 

野口さん
僕の場合は、今回、軟部組織はあまり逃さないようにしてます。軟部組織は通常、万人受けするように、逃がせるように設計されてることが多い。万人にとって70点な木型を作らなきゃいけないけど、今回は河野さんにとって100点を目指して作れるので、そういった部分は意識せず絞り込んでます。

 

あとは、日本人の場合、アーチの落ち込みでトラブルになってることが多いので、僕は基本的に内側の支持性を上げることが多いです。

 

 

野口さん
で、まあ当然そういう設計にすると、後足部の支持性は上がって、遊びは少なくなりますよね、絞り込んだ方がフィット感が上がりますが、どっちがいいっていうものではないですね。解剖学的な内容を落とし込んでも、足が当たって痛くなる、とかっていうことはチェックシューズの段階だとないということがわかった、ということですね。

 

 

野口さん
結果、一連の歩行の動きの中で、トラブルにならず適合した木型を、解剖学的な形状を考慮して作成することができることが確認できました。
ただ、解剖学的な内容を落とし込むことが正解ではなくて、それぞれのオリジナリティがあるし、その違いがビスポークの楽しみでもあると思います。あくまでも、僕のスタイルということですね。

 

今回はご清聴、ありがとうございました!

 

 

終わりに

 

皆さん、いかがでしたでしょうか?
前回を超えるボリュームでしたね!
ここまでたどり着いたみなさん、リスペクトですw

 

少しでもこれから靴に関わる時のプラスになる情報があったら嬉しいです!ぜひ気軽に感想や質問、ご要望など問い合わせフォームからご連絡くださいね!お待ちしております!

 

 

 

※次回イベントのお知らせ

現時点では第3回の木型会は未定ですが、野口さんと木型を削る会、というのを小規模のお試しでやってみる予定です!その記事もこちらにアップいたします!

 

うまくいけば規模も広げて定期的に開催できるかと思いますので、引き続き情報をお待ちください!

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