皆さんこんにちは!河野です!
今回は、私がオーダーした木型が出来上がったとのことでその確認にお伺いしたのですが、
「せっかく木型をオーダーしたんだから足のことも詳しく知っておいた方が靴作りに役立つはず!」
との職人さんのご好意で、先日同様イベントを開催して、勉強会形式で色々教えていただいた時のことを記事にしました!
今回もお願いした職人さんは、野口達也さん(@zucchinitatsuya)です!
※詳しくは前回のイベント記事をご確認ください!
ではさっそく、イベントの様子をお届けします!
目次
野口さんって何やられてる方ですか?
あ、先になにか野口さんに聞いておきたいことある人とかいます?
確かにめっちゃ怪しい人みたいにみられてますかね?
野口さん、すみませんw
僕は「義肢装具士」って仕事をしてます。
義肢装具士っていうのは、あんまりわからないと思うんですけど、もともと僕今38歳なんですけど、18歳ぐらいから靴の業界に入って勉強し始めて、色んな靴の教室とか、型紙の職人さんだったりとかいろいろな人について勉強をして、木型屋さんとかも行きつつ、だんだん足に興味が出てきて義肢装具士免許を取ろうかなと思いました。
義肢装具士免許っていうのは、日本でいうコルセットとか義足とか、リハビリとか治療のために器具とか、道具が必要になったりする人向けにアイテムを作る国家資格ですね。
だから足底板(インソール)とか、おばあちゃんがかかとが痛いって病院行って作ってもらってたりすると、だいたい義肢装具士が関わってたりとかしますね。
あとは腰の手術をして、オーダーのコルセットを作ったっていうと、義肢装具士が作ってるような感じですね。頭の保護帽から外反母趾の方がつま先に挟むクッションまで、実は義肢装具士が関わってたり、設計をしたりとかしてます。日本全国にいますね。
で、今も臨床に従事してます。
義肢装具士って初めて聞きました?
で、今日は解剖学っていうテーマで、そもそも解剖学ってなに?っていうのはあると思うんですけど、解剖学から話をしたいなと思ってます。
解剖学って色々あるんですよね。血管学とか、筋肉も色んな筋肉があったりして、例えば今日は関節の動きの話もするんですけど、肩関節学会とか膝関節学会とかフォーカスして、このパーツはどういう形になってて、とかっていう話が解剖学ですね。
運良く今日は皆さん、靴脱いでスリッパになりましたし、もしよかったら足のこと知らない方がほとんだと思うので、自分の足を動かしてみたり、周りの人の足を触らせてもらったりして、「あ、こんな感じなんだ」っていうのを見たりすると、理解が深まるんじゃないかなと思います。
今日出てくる足はだいたい右足です。
模型も右足が多いですね。
靴木型設計のための解剖学、スタート!
今日は「靴木型設計のための解剖学」というテーマで進めさせていただきます。
どっちかというと、かかとなどの後足部の方が靴の適合には重要視されますね。
大まかな流れとしては、まず足をみている視点と使われる専門用語をご説明し、あとは足部の動きと関節、個々の骨の形状と特徴を説明するところまでを第1部は終了です。
第2部は、第1部の内容を今回の木型にどう落とし込んだのか、っていうのを解説させて頂きます。
質問とかあったらその場で止めて聞いていただければ、お答えできるかなと思いますので、どんどん発言しちゃってください。
それでは早速資料を使ってご説明を開始します!
横の面は矢状面(しじょうめん)、足でいうと外とか内側とかっていうやつですね。
あとは横断面(水平面)、つま先側かかと側から見るときは前後なので前額面(ぜんがくめん)って言います。
矢状面でいうと、つま先が上下する動きを底屈(下向き)背屈(上向き)っていいます。肘で行ったら「伸展屈曲」とかっていうんですけど、聞いたことあります?
水平面はさっきフリスビーの例でもいいましたが、内転・外転の動きですね。つま先が左右に動く感じです。ひぐちカッターの動きですね!
ツッコんだ方がよかったかwタイミングを見失ったw
足の動きをこの3面上で立体に分析して、関節の動きを捉えてます。つまり、3ついっぺんに動くパターンもあるわけですね。足の動きって立体的なのでボールジョイントみたいな動きをするのをなんとなくでいいんで、理解しといてください!用語としては、回外・回内とかって言い方をしてます。
数年前に、日本ではこの用語それぞれの呼び方も統一されたんで、興味ある方はぜひ覚えてみてください。
とりあえず足は「複雑な動きをしてる」ってことですね。膝関節みたいに曲げ伸ばしだけじゃなくて、立体的な動きをしてるよってことです。
実はめっちゃ複雑な足と関節の構造!
皆さんいかがですかね?
(挙手)あ、半分ぐらいは既にご存知ですね!
まず、片足には30個弱ぐらいの骨がありまして、関節は33関節かな。非常に骨と関節の数が多いです。
その構造をアーチとかっていうんですけど、資料のやつは右足を矢状面(内と外)から見た図ですね。
内外の山なりになっているラインを、それぞれ内足縦アーチ、外足縦アーチって言います。横アーチは中足骨を繋いだラインの部分ですね。(資料左上)
各アーチには「キーストーン」というものがあります。かまくらとか作った事ある人います?最後にはめる要石っていうのがあるんですけど、それのことですね。アーチの頂点にあります。
かまくらの場合は大きな形の変化って無いと思うんですけど、足の場合は形状に変化があります。
例えば、骨の配列とか関節の連結の硬さとかによって、人によってはトラブルが起こったりとか、体重がかかった時にアーチがくずれちゃったり、逆に骨配列の関係でアーチがあがっちゃって立った時にハイアーチにみえる足とか、個体差が結構あったりします。
関節の位置関係とか柔らかい硬いっていうのが極端だと、内側にくずれちゃう人は親指にたこができるとか、指が変形しちゃうとかを引き起こしたりします。つまり、変な負担のかかり方はよくないってことですね。で、それは個体差によって変わってくると言うことを覚えておいてください。
だから、かかとが痛いっていう人の訴えに対して、種子骨をグリグリ触ったりすることはあんまりないですね。「なにさわってるんですか?」みたいになっちゃうのでw
レントゲン取るまで、そもそもないことを知らなかった、っていう人もいたり別に困ったりすることはないですね。
(資料中央)ピンク色の部分が筋肉ですね、その内側にあるのが骨で、足の裏側につぶれた胃袋みたいにしてあるのが脂肪です。
見たとおり、かかとは脂肪体が結構多いんですね。かかとの形状、自分で触ってみると丸みがあるって思ってる人が多いと思うんですけど、骨の形でいうと中心を荷重線として、内外で結構形状差があるんですよね。(資料左)
あとは、脂肪体なので、人によって柔らかい人もいればがっちり筋肉質な人もいます。あとは靴の形状でいうと、載距突起(さいきょとっき)マニアがいるぐらいの有名な骨形状があるんですけど、それは置いときましょうw 河野さんも当たるって言ってたくるぶしの下があたるっていうのも、骨が張り出してしまっているのか、足が外側に倒れてしまっているのかでも違いますし、かかとの形状って大事なんですね。
片足が地面を蹴り上げて宙に浮いて、その間は反対の片足が体重を支えて、それが安定しているからこそより前に踏み出せる、っていうそれぞれのフェーズで求められる機能があるんですけど、縦方向の力があまり大きくならないようにする機能がかかとの形状に現れてるんですね。
膝とかも体重がかかった時に軽く曲がったりとかして、衝撃吸収をする動きをするじゃないですか。キャッチボールする時に腕の関節が全部固まってたら、ばしって強い衝撃がきますよね。回内をしながら体重を受け止めてあげる、っていうのがスムーズに歩くために必要なんですね。その動きを作るために外側にずれてかかとがある感じです。
もし荷重線の真下にかかとがあったら、地面が凸凹してる時に回内の動きをするか、回外の動きをするかわからなくなっちゃうじゃないですか?外側についてることによって、回内の動きをすることができる足部の構造になってるわけです。
あと、足の構造は個人差もあるんですけど、年代差もあるって言われてますね。構造自体は成長期に発達するっていわれてて、生まれてすぐは足根骨(そっこんこつ)とかってほとんど軟骨だったりとか、アーチの発達を促すインソールがあったりとか、それがだいたい15歳ぐらいまでって言われてますね。当然、たくさん歩いて運動して、って人とずっとゲームしてる人だと、発達部分で違いが出てくるっていうのは言われてますね。
例えば60歳台とかだと下駄履いてたりとか、自転車買ってもらえなかったとかしますし、運動量は今はだいぶ減ってきてると思いますね。そういった年代差は足の構造に出てくると思います。
実際こんな風に歩いてみると(野口さん歩く)蹴り上げのときに無意識で動いてる部分ですね。だいたいそれぞれ、資料内に記載の角度ぐらいを目安に曲がるようになってます。
ただ、これは裸足の状態で、です。靴を履いた状態だと10°ぐらいでも歩くことは可能なんで、その分ウォーキングシューズみたいな底が転がるように動く靴で補完するとか、他の部分の関節で補完したりして、歩けるようにするんですね。代償運動って言います。なんとか身体は頑張って、効率的な歩行をしようとします。
上の写真は足首の回内・回外の動きですね。足首って、複合関節なんですよ。つま先を上げ下げする関節と、ボールジョイントみたいに回す関節は別物なんです。立った時でいうと、アーチが下がるような動きですね。曲がる確度が、こちらも資料に記載の角度が目安になります。
あと、つま先が目立っちゃうんですけど、スネとかかとを固定して足首の動きを見てるので、前足部の動きは考慮に入ってません。
怒涛の骨形状メドレー!
まずは距骨(きょこつ)と言って、一番奥まったところにあります。スネからの荷重を受けるものです。筋肉はないんですけど、ボールジョイントみたいな立体的な動きをします。色んな骨の連動で歩行が成り立ってるんですね。
アーチの低下で距骨の動きを思い出してほしいんですけど、距骨の一個前に付いてるので、同じように回内の動きをするわけですね。ここには筋肉が付着しているんですけど、アーチを支える筋肉に負担がかかると、靭帯が引っ張られて厚く過剰骨になって、出っ張りが強くなっちゃうんですよね。女性とか子供の方が関節の繋ぎがやわらかいので、張り出してきやすくて、靴を履いた時に当たったりします。
隆起としてぼこっと出てきちゃうこともある部分です。動きは上下だけじゃなく、扇をあおぐように外側へ広がる動きも混ざって立体的になります。
なんか嬉しいw
早とちりw
今河野さんから質問あった、荷重時は軟部組織だけじゃなくて関節が広がってるんですか、という部分ですが、前足部は軟部組織より関節の方が影響が大きいんですね。中足部は関節運動が多くなく、軟部組織も他と比べると大きな特徴はないので、荷重による変化は小さい部分です。後足部は関節運動は少ないですが、先程お見せしたとおり、軟部組織が多かったりします。
部位によって荷重時の変化、その質が違うってことを理解してもらえたら。この前の計測時にも言いましたが、計測値が変わった時に、その意味がなにかっていうと「関節運動を伴う変化」なのか「軟部組織の変化」なのか、っていうのを理解しないといけないかなと思います。
はい、第一部はここまでです!あとスライド10枚ぐらい、第二部に入っていきますね!
全部書き起こせるか不安ww
解剖学の視点を実際に木型に落とし込むとどうなる?
今まで説明してきた解剖学的な部分っていうのは、科学的に解明されていることなので、僕が考えてっていう部分じゃないんですよね。逆にこれから説明していくことは正解っていうのはないので、あくまでも僕の考える仮設と検証結果をお伝えしていきます。
そして、トラブルが発生するのはたいてい歩いている時なんですね。あとは、圧迫が部分的に強すぎたり弱すぎたりすると、問題が起きたりしますね。当然アッパーが柔らかいと大丈夫ということもあるかと思いますが、それが適合が良いとは言えないと思うので、あくまでも木型に特化して考えていければと思います。
足のタイプはよく雑誌とかに出てますよね。スクエア型とかエジプト型とか、ギリシャ型とか言われますね。これは、時代の石像の足の特徴からそう呼ばれてるみたいですね。あとはアーチが長い人と指が長い人で、適合が変わってきたりもしますが、僕はそこまで重要視はしてないですね。幅が同じでも指の長さ次第でトウの形は変わってきますね。
次の検査(Objective)では、炎症ある部分が熱を持ってるかとか、当たって擦りむけてしまっている部分がないかとか、あとはその場で足踏みをしてもらって動的な動きのなかから特徴を確認します。さっき言った通り、トラブルは歩行時に起こる事が多いので、静的ではなく、動的な観察をより重視しています。検査をしてるとたまに矛盾した結果とかが出てくることもあるんですけど、その場合は動的な評価をより重要視して、負荷がかかってる運動連鎖を分析していきますね。
あとは関節の可動域、柔らかさの検査もします。個体差もある部分なので。ニュートラルポジションも合わせて確認します。最後、一般的な計測も行います。
その後は評価(Assesment)ですね。どういう運動連鎖を制御すれば、適合していくのかを検査内容から逆算して進めます。
最後の計画(Plan)は、その後どういったスケジュールで形にしていくか、とかですね。義足だと納期が決まってたりとか、今回は河野さんがいつ東京出張に来るから、それまでに削ろうとかwあとは今回みたいにチェックシューズを作るのか否かとか、を決めていく部分になります。
骨と筋肉、軟部組織が全体でどう構成されているのか、っていうのを想像できるようになるといいかもしれないですね!
あとは、日本人の場合、アーチの落ち込みでトラブルになってることが多いので、僕は基本的に内側の支持性を上げることが多いです。
ただ、解剖学的な内容を落とし込むことが正解ではなくて、それぞれのオリジナリティがあるし、その違いがビスポークの楽しみでもあると思います。あくまでも、僕のスタイルということですね。
今回はご清聴、ありがとうございました!
終わりに
皆さん、いかがでしたでしょうか?
前回を超えるボリュームでしたね!
ここまでたどり着いたみなさん、リスペクトですw
少しでもこれから靴に関わる時のプラスになる情報があったら嬉しいです!ぜひ気軽に感想や質問、ご要望など問い合わせフォームからご連絡くださいね!お待ちしております!
※次回イベントのお知らせ
現時点では第3回の木型会は未定ですが、野口さんと木型を削る会、というのを小規模のお試しでやってみる予定です!その記事もこちらにアップいたします!
うまくいけば規模も広げて定期的に開催できるかと思いますので、引き続き情報をお待ちください!