皆さんが最後にミシンに触ったのはいつですか?
大半の方は、小学校の家庭科の授業など、遠く昔の記憶ではないでしょうか。
紛れもなく自分もその一人でしたが、結論、ミシンを使って靴のアッパーを縫う工程に非常に惹かれ、自宅に工業用の革用ミシンを購入してしまいました!買ったからにはやるしかないものの全てが手探り状態。。
今回は精密機械であるミシンを使い始めるにあたり、メンテナンスをプロの製甲師さん(靴のアッパーを縫う専門の職人さん)にお願いした時のことをまとめています。
少しでも「自分のこだわりのアッパーを作ってみたい!」という方の後押しになったら嬉しいです!
革靴のアッパーを縫うためのミシンとは?
そもそも革靴のアッパーとは、平面である革から成り立っています。(立体である動物の皮が平面の革になるまでは、今回は割愛いたします。)
その平面である革のパーツ同士を縫い合わせて、立体である靴の形にしていく時に必要となるのがミシンです。靴を見た時に色んな縫い目が見えますよね。
そんなミシンですが、革靴のアッパーを縫うとなると、大きく”腕ミシン”と”ポストミシン”という2つの種類に絞られてきます。今回の記事でご紹介するのは腕ミシンになります。
皆さん靴職人と聞くと、このミシンのイメージをする方も多いんじゃないでしょうか。やっぱりかっこいいですよね!
ちなみに、これと向きが逆で、右から左へ腕が伸びた17ミシンというのもあります。こちらは鞄などを作る時に使うようです。
やはりそれぞれの目的次第で、縫い方や縫うものの送り方に関する適合性が出てくるのですね。
私が靴教室で使ったのはこっちでした。
腕ミシンより高性能なミシン。
お高い。
でも機械制御ができるから、初心者でも扱いやすいそうな。あとは腕部分が下から出てきているので、既成靴の履き口などを縫うのはちょっと難しい…修理向きではなさそうですね。
また、「家庭用の手芸ミシンだとダメなのか?」と思う方もいるかと思いますが、
①表裏の革を重ねた厚さを縫うことができない
②立体的な縫い方も難しい
なので、革靴を作る場合は上記どちらかのミシンを準備する必要があります。
・・・というのが一般論ですが、趣味レベルであれば家庭用ミシンで作る事も可能です。
ぜひ下記記事をご参照ください!
消耗部品の交換!
私はオークションで中古のミシンを購入したため、最低限の縫う作業をするために交換が必要な部品がいくつかありました。
ミシンは精密機械なので、本当に多くの部品が使われていますが、特に “糸の通り道” である部品については消耗が進んでしまうと糸が切れるなど致命的な不具合が発生する恐れが高まります。
今回は、 “ピンピン” と “大糸掛” と呼ばれるパーツを交換して頂きました。こんな感じのパーツです。
左:ピンピン、右:大糸掛
実際にはこんな感じで取り付けられています。
ピンピン
大糸掛
この後、糸を通していく順番をご紹介する際に、これがどんな役割のパーツなのか詳しくご説明します。
上糸/下糸の準備!
糸の通り道の準備ができたところで、実際に糸を通してみます。革を挟んで上下の糸で縫い合わせていくのがミシンです。
ちなみに上下の糸は、尊敬する職人さんにオススメいただき#20番を使っています。針は、「平針:TF×F8(SIZE14)」「縫い割針:TF×6(SIZE12~14)」を使用してます。
では、それぞれの糸をミシンに取り付ける方法をご紹介していきます。
上糸の通し方
まずは上糸編。
手順としてはシンプルに、決められた順番に決められた場所に糸を通していく、というものです。
③④は先ほど交換した大糸掛とピンピンですね。
②は分かりづらいですが、2枚のお皿が重なったような部分の間に糸を通します。
⑥も分かりづらいかと思いますので、別角度からの写真も載せておきます。ここの溝に糸を通します。
番外編:糸置き
私は持ってないので、床に直置きしてますwヨレだけ気をつければ特に問題ないそうですが、ダイソー製品で自作されてる方もいるのでチャレンジしてみようと思います!
下糸の通し方
次は下糸編。
大きく2段階、下糸は「ボビンに巻く」のと、「ボビンをセットする」工程があります。
まずは、ボビンに糸を巻きます。
①手で数回、奥から手前に向かってボビンに糸を巻きます。
②ミシンにセットし、モーターを回します。
端革で挟んで持ったまま、途中で糸がヨレないようにテンションをかけます。
③ボビンケースに下糸を巻いたボビンを入れて、釜にセットします。
④蓋を閉めて準備完了!
上下の糸が揃ってようやく縫い始めるスタートラインに立つことができます!
基本的なことばかりですが、やっぱりプロの手際と細かく広い視野は凄いなと改めて感じました。
日常的な給油メンテナンス!
最後は日々のメンテナンスについて。
やっぱりミシンは針の上下運動を繰り返していますので、道具の摩耗が進みます。そこで重要なのが給油です。
カバーに覆われていて見えないですが、内側にも様々な部品がいっぱいあります。そんなパーツ達にも油が行き届くよう、腕ミシンには穴がいくつもあります。
具体的に油を注していくのは、こんなところ。
頻度としては2〜3ヶ月に一度程度で良いようです。
あと重要なのは、下糸を入れる釜の部分。運よく私の相棒ミシンはここにも給油する穴がありました。
ここは2〜3週間ぐらいで給油した方が良いようです。
消耗品ではありながらも、やはり日々の扱い方次第で変わってきます。私はまだわかりませんが、天気や季節でも調子が変わるようです。奥が深い。
いかがでしたでしょうか?
最終的にはこんな感じで縫えるようになりましたよ!
靴自体はもちろん、色んな機械や道具も、カッコよく面白いものばかりです。収集グセのある自分としては、ミシンを愛でている時間も靴作りを楽しむ大切な時間です!
興味をお持ちいただいたあなたのために、今後イベントの企画なども進めて行く予定です。
具体的に知りたいことがあったら、是非問い合わせフォームからお気軽にコメントください!
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