こんにちは、MSY代表のブン(twitter)と申します。
前回の初心者・未経験者向けのレザーサンダル作り(記事はこちら)から少しステップアップして一足作ってみましょう!
とは言っても身構える必要はありません。複雑な型紙も、釣り込み作業もありません。縫う箇所は最小限。気軽にトライできる一足になっています。
出来上がるのはこちらの靴!
お気づきの方もいらっしゃるかもしれません。
アメリカ ニューヨーク州北部の農村部オーロラ町の工房で生まれた「オーロラシューズ」をリスペクトし、まるごと真似してしまいました!
では早速、必要な材料から見ていきましょう。
目次
必要な材料
中底
足が触れる中底には、しっかりした厚み(4mm~)のヌメ革がおすすめです。
アウトソール
今回は中底とアウトソールとの接合は接着剤のみです。
こちらを使いました。
サイズ違いや、別タイプのソールはこちらを参照ください!
ストラップ
丈夫で厚みもあり少量をお求めやすい「ウェルト」をストラップとして代用します
バックル
ストラップを留めるための金具です。
レザークラフトコーナーでも購入いただけますし、レザークラフトフェニックスさんにもかなりの種類の取り扱いがあります。こちらをご参照ください。
アッパー用革
2mmほどの厚みのヌメ革がおすすめです。柔らかいオイルヌメ革か、またはヌメ革に自分でオイル補給(食用オリーブオイル、マスタングペーストなど)してもOK。
より詳しい革の買い方について詳しくはこちらの記事をご参照ください!
【 Let’s try ! 】靴作りにおすすめ!初めての革の買い方
素材については以上!では工具について見ていきましょう。
必要な工具
「必須工具」と、「あると便利な工具」に分けてご紹介いたします。
※なお、ペンやハサミやテープなど、一般家庭に普通にありそうなものはあえて記載しておりませんのでご了承ください。
まずは、必須工具からです!
必須工具
革包丁
切れ味が悪くなったら替刃を交換するだけの手軽さ。
もしルージュスティックがあれば、研ぎながら使えるのでオススメです。
こちらの記事をご参照ください。
カッターマット
フットベッドに沿わせてミッドソールやアウトソールを切る際、革包丁の刃を真下に向けてを垂直に下ろすと怪我もしにくいです。
そのために机にカッターマットを敷きましょう。
オルファ(OLFA) カッターマットA3 (320x450x2mm)
菱目打ち
アッパーと中底とを縫い付けるための下穴を開けるために使います。土台にはゴム台などを引いてください。ハンマーで叩いて革を貫通させるため、音にご注意ください。
(音を気にせず穴をあけたい方は次の菱目パンチを検討ください!)
私は3mm巾で縫いましたが、ちょっとピッチ(縫い幅)が細かすぎた気もします。もっと広いほうが(つまり4mmや5mm)よいかもと感じました。ここは完全に個人の好みですね。
菱目パンチ
こちらだとほぼ無音で作業をすすめることができます。本記事のシューズはこちらの菱目パンチで作成しています。
菱目打ちと同様、4mm,5mmのラインナップがありますのでお好みで選べます。
針&糸
菱目の穴の大きさと、糸の太さで縫いやすさと印象が変わってきます。
正解というものはありませんので、こちらもお好みでどうぞ!
レザークラフト用の一般的な縫い針ですね。
ロウがしっかり塗られた、頑丈な糸です。こちらからお好きな色や太さを探してみてください。
参考までに、私は下記組み合わせで作りました。
- 協進エル プロ菱目パンチ 4本目 3mm巾
- 手縫い針(丸針・太)5本入り
- ビニモ糸・ダブルロウ付き 1番手※こちらを折り返して2重縫い
※これだと下穴に対して糸が太すぎてちょっと大変でした。よって上記では0番手を紹介させていただいています。
接着剤
手軽に入手できる接着剤G17という手もあるのですが、私がいつも使っているおすすめ接着剤をご紹介いたします。
製靴用に最適。とにかく強力です。革同士であればこちら一つでOKなのですが、今回は革とゴムとの接着になるので下記プライマーという下処理剤も必要となります。長期間使用していないとダマになってしまう点は事前にご留意ください。
ゴムの素材(アウトソール)に事前にプライマーを塗布してから、接着剤を使用します。マモルオンラインさんの購入ページで使い方も記載がありますのでご一読ください。
とは言え。「ちょっと手間がかかるな・・・。」と思った方は、プライマー不要で強力かつチューブタイプのダイアボンド888がおすすめです!
ハンマー
穴あけポンチや、圧着のために使います。
穴あけポンチ
ハンマーで打つタイプはこちら。
ハンドタイプはこちら。お好みでどうぞ!
SUNDRY ロータリーレザーパンチ 穴あけ直径2.0-4.5㎜(6段階)
木工ヤスリ
切り回したコバ(側面)を荒削りする際に使います。
紙ヤスリ
接着面を荒らす用途と、切り回したコバ(側面)を整えるために60番〜240番のセットが便利です。
E-Value 紙ヤスリセット 9枚入 #60・#120・#240
続いて、あると便利な工具たちです!
あると便利な工具
ガラス
コバ(側面)を整えるために使います。木工ヤスリと紙ヤスリだけでも作業は可能ですが、慣れるとガラスのほうが作業性も仕上がりもアップすると思います!
ガラスの割り方は921さんの下記動画をご参照ください
靴作りに必要な自在にガラスを割る方法
キヤスリ
やっぱり、靴作りの専用工具であるこちらは使いやすい、手放せない・・。
木工ヤスリのようには一気に削られすぎず、でもしっかり削れる。コントロールが効く。いちど体験してみてください。
台金
接着剤の圧着の土台にしたり、今回はアッパーの成型にも大活躍します。
スピラン
ウェルトやコバ(側面)を染める用です。(油性マジックでも可能は可能です)
タッカー
アッパーの位置決めをする際の仮止めに便利です
キリ
刻印を打つのに使います。
オーロラシューズの作り方
作り方は、大きく次のステップです!
- 型紙作り
- 型紙調整と本番アッパー作成
- 中底加工
- アッパー接合
- ストラップ作り
- アウトソール貼り付け
- コバ仕上げ
- ロゴ刻印
もし不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください。では、それぞれの工程を見ていきましょう!
1.型紙作り
ベース型紙印刷
型紙は、2枚ありますのでダウンロード&A4で印刷してください。左右反転させることで両足分になります。
1.アッパー(前)
2.アッパー(かかと)&ソール(中底、アウトソール共通)
印刷したら、このように実線を切り出してください。
※点線は私がこの記事で使った線です。あくまで参考までに書いています。
これで「ベース型紙」が切り出せました。
ソール型紙調整
ベース型紙(ソール)の上に足をおいてみてください。
ベース型紙は24.5cm(細)ですので、ご自身の足に合わせて線を書きます。
「どう線かけばいいんだろう・・・」と迷われるかもしれません。
その場合は、コンパスを使いましょう。コンパスの針をベース型紙の線に添わせると、拡大&縮小の線がカンタンに引けます(拡大縮小コピーでも可)
自分のソールの線が引けたら、それに合わせてダンボールを切り出すだけです!
こんな感じです!
アッパー型紙調整
つづいて。アッパーのベース型紙を一度クシャクシャにしてから開きます。
これは、ダンボールの中底に沿わせやすくするための工程です。
このような感じです。
ダンボール中底においた足を、紙アッパーで包み込みながらテープで固定します。
はみ出た余分な紙アッパーは切り落としてください。
※このとき、履き心地がピッタリすぎてしまうと、革の厚みや種類によってはキツいかもしれません。すこし余裕を持たせるイメージで。
アッパーの前後をつなぐ1cm幅程度の紙ストラップをつくり、いちど組み立ててみます。
ストラップを通す穴、デザインバランスを確認して修正します。
修正する際は、余分な部分は切り落とし、足りない部分は紙をテープで追加するだけでOK!
ある程度納得のいくものができたら、クシャクシャの紙アッパーを一度剥がして清書&切り出します。
コピー用紙よりは少し厚めの紙の上に重ねて写し取ってください。(ケント紙があるとベスト!)
清書版を切り出して革の上においた状態。
2.型紙調整と本番アッパー作成
本番に取り掛かる前に、出来れば似た素材や余った革で試作してみましょう。
ここでサイズ感やデザインを確認し、型紙に反映させます。
仮アッパーをタッカーで留めて確認
このタイミングでは縫う必要はありませんので、フチをタッカーでバチン!と留めちゃいましょう。(無ければ接着剤でOK)
実際に履いてみて、キツイところ、ユルいところ、デザインの直したいところが見えてきたらそれを型紙に書き足して修正をしてください。
本番アッパー作成
型紙が決まったら、いよいよ本番の革に写し取っていきます。
これを切り出したらアッパーは完成!
なお、ストラップを通すスリット穴は、このように両端にパンチで穴をあけてから
革包丁で切ります。(専用の工具もあるのでご興味ある方は探してみてください)
3.中底加工
フチを切り落とす
外周から8mmの線を引き、斜めに漉きます。厚みは1mm強程度を目安に。
ここはアッパーに使う革の厚みに依ります。あまり細かいことに拘らなくてOKです!
漉く理由としては、アッパーを外周に縫い終わったときの収まり(つまり見た目)が良い程度です。靴自体の強度には関わりませんので、「漉くのは難しい・・」と感じられる方はフチは漉かないというのも手です!
外周と足の触れる面を荒らす
漉いたフチは、凸凹しないようにヤスリで整えます。
そして、中底の表面はガラス(紙ヤスリ#120でもOK)で銀面を削っておきましょう。
これは吸湿性能を上げることで着用の心地よさをアップさせるためです!
4.アッパー接合
工程としてはシンプル。接着して、縫うだけです。
言うのはカンタンですが、最も時間のかかる工程です!じっくり楽しみましょう。
アッパーを接着剤で固定
中底のフチに沿って、アッパーを接着します。
ここで使う接着剤は仮止めです。
上で紹介したノーテープやダイアボンドなど強力なものは特に必要ありません。お好きな、使いやすい接着剤でどうぞ!(G17など)
接着する際は、クッキングシートを挟んで少しづつ貼っていくと失敗しません(おなじみの作戦)。
アッパーのつなぎ目は、余った革は自然な感じで切り落としておきましょう。
「余ったどころか足りないよ・・・」という方も気を落とさないでください。
足りないなら足せばよいだけです。大丈夫、つなぎ目もそんなに目立ちません!
縫い穴を開ける
フチから5mm程度のところに、ガイドを一周グルッと引きます。
底面も同じように。底面は完全に隠れるのでボールペンなどでクッキリ書いちゃってOKです。
ガイドが引けたら、それに沿って穴をあけていきましょう。
アッパー側の穴はキレイに揃えたほうが、出来上がりの見た目は良いです。
底面側は正直ガタガタでもバレません・・!
縫う
あとはひたすら縫っていきます!
縫い終わりました!
※一般的なレザークラフトとなんら変わらない縫い方ですので、レザークラフト未経験の方は「レザークラフト 初心者 縫い方」などでYOUTUBEやブログを検索してみてください。たくさん情報はでてきます。
5.ストラップ作り
ご準備されたバックルによっては、ストラップ(ウェルト)が入らないため削る必要があると思います。その調整がメインとなります。
ストラップ幅加工
ここは特にコツもなく、ただ幅が合うように細く切り取るのみです。
上:加工前
下:加工後
バックルの穴あけ
バックルを通すためのスリットをあけます。
穴をあけてから、、
革包丁やカッターで、穴をつなげればOK。
ストラップの漉き加工
バックルの形状によっては、ストラップの厚みを薄くする必要があります。
この溝が消えてなくなるくらいを目安に漉くのがとてもわかり易いと思います。
先端部分も、適度に漉いてあげましょう。
こんな感じです。
バックル取り付け
あとはバックルを通します。
つけてみると分かりますが、、このタイプだと「履いてるうちに抜けてしまう」ということがそもそも発生しません。
よって私はバックルは接着も縫製もしていません!
あとはピンの来る位置に穴をあければ完成です!
このタイミングで、お好きな色に着色しましょう。(この記事では後の工程で黒くぬっています)
6.アウトソール貼り付け
この工程にて、ついにすべてのパーツが接合されます!あと少しですのでがんばりましょう!
※接着剤の使用法や乾燥時間などは材料の項目をご参照ください。
接着
一度アウトソールに置いてみて、目印の線を書きます。
接着剤をぬったら、クッキングシートを挟んで少しずつズラしながら貼っていきます。
貼りました!
あまった部分は切り落としましょう。
この工程に限ったことではありませんが、お怪我には十分お気をつけください。
7.コバ仕上げ
ヤスリ
革包丁である程度形を整えたら、後はヤスリの出番です。
荒いヤスリから順番に、全体を慣らすようにヤスっていきましょう。
この工程のとき、キヤスリのあとにガラスをかけるのが靴作りの定番だったりします。
荒いヤスリの跡をガラスで削ると仕上がりもキレイになります。
ガラスを準備されていない方は、紙ヤスリ(120番)で代用しましょう。
着色&磨き
紙ヤスリの120番をかけ終わりましたら、着色します。
スピラン、コバインク、油性マジック、、お好みでどうぞ!
着色されて統一感がでてきましたね。
このあと再度、紙ヤスリをかけます。色が薄くなるようであれば再度着色、紙ヤスリ・・
と繰り返すことで色が定着し、コバの見た目も落ち着いてきます。
靴磨きが好きな方は、この工程でコバにワックスをいれるのも良いと思います!
8.(オマケ)ロゴ刻印
この工程は無くても全然大丈夫ですが、一気に愛着がアップすること間違いなしのお手軽ロゴ刻印です。
ロゴ印刷
普通のコピー用紙に、ロゴなどを印刷して中底に置きます。
キリでチクチク刻印
あとはキリでチクチクと刺していくだけです。簡単!
こんな感じでロゴが打てました。サイズはマジックで書いてみました。
完成
ということで、完成いたしました!
さいごに
はじめて「オーロラシューズ」なるものを教えていただいたとき、そのパーツ構成/製法のムダの無さに驚きました。
と同時に、これは靴作りの楽しさを広めるためにも良い教材になりえると確信しました。
実は本記事執筆時点では私はホンモノのオーロラシューズを見た事すらない(エッ・・!)ので、似ても似つかない一足かもしれません。笑
とはいえ靴を作るという楽しみは最大限味わえますし、モチロン日常的に履くこともバッチリ可能です。是非試してみてはいかがでしょうか?