車に轢かれた革靴。再生へのリアルストーリー【MSYブラックジャック第二夜】

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前夜のサマリー

2019年3月某日、ひやあつ氏@3251324rrの大切な一足の革靴が不幸な事故に見舞われる。
ツイッターに上げられたその惨状に、誰もが言葉を失った。

 

バロン阿部氏@AbeDayoからのMSY出動コールを受け、MSYメンバーで支援のための相談を開始。外部の有識者が必要との判断でブン代表から協力要請を呼びかけると、2名の熱い男達が協力を申し出てくれた。
いずれも靴に関わるお仕事をされている野口さん@zucchinitatsuyaとIWAさん@IWA00870832のお二人だ。

 

ひやあつ氏の革靴再生プロジェクトは「MSYブラックジャック」、再生対象となる革靴は「ピノコ」と名付けられ、再生に向けた取組がいよいよ始まる!

 

 

再生検討会議

ピノコはMSYメンバーTomiの自宅へ送られてきていた。

 

シューツリーが装着され、柔らかなシューバッグに大事に入れられたピノコは、写真で見た通りの痛々しい傷が目立つものの、その肌自体はモチモチの革そのものであり、確かな命の鼓動を感じさせた。

 

3月某所。
今日は野口さんが主催する「ファーストシューズを作るワークショップ」(※1)の開催日だ。終了後の1時間を頂いて、その会場に集まってピノコの再生検討会議を行うことになっている。

※1: このワークショップに参加されたマモさん(@FittingDiary)の秀逸な参加レポートはこちら

 

会場に到着すると、まだワークショップは続いている。みんなとても楽しそうだ。IWAさんが既に来ている。「お久しぶり」と挨拶を交わす。

 

MSY編集長のくすみさんも到着。愛用のカメラと共に相変わらず素敵な靴を履いている。MSY代表のブンさんとはパソコン越しにネットカンファレンスで結ぶことになっている。どうやらワークショップが押しているようで延長に突入する模様。

 

野口さんがワークショップの合間を縫って来てくれる。ピノコ再生検討会を会場の隅っこで始めようとのこと。

 

 

さっそく、皆でピノコを詳細に確認。ネットの向こうのブン代表にも、見えるかな?

 

 

気になるトウの部分は、エンマ(※2)で広げながらウェルトの奥まで確認、やはりトウ周りは掬い縫い糸も切れているようだ。(※3)

 

※2: エンマとはソールはがしなどに用いる特大サイズの釘抜き様の道具です。
※3: 掬い縫い糸が切れているということは、アッパーの革もちぎれている可能性が高く、再度アッパーを釣り込みする際に支障が出る可能性があることを意味します。

 

 

 

かなりひしゃげてはいるものの、ウェルト周りは問題なさそうに見えるけれど、、、

 

 

このようにウェルトとアッパーを縫い止めている掬い縫い糸がぶち切れている。ということはその部分のアッパーもちぎれていると思われるため、トウ革の交換とともに、サイド部分に革を継ぎ足す必要がありそうだ。

 

より靴内部から圧力をかけてゆがんだ部分を伸ばしてみるためにシューツリーに変えて、木型を入れてみようということに。なんと、野口さんがピノコの再生検討のためにサイズ違いで3つの木型を持ってきてくれていた。

 

 

シューツリーを外し、一番サイズに近い木型をはめてみる。
なかなかはまらず、ワークショップに来ている皆さんからも靴べらをお借りして奮闘すること数分、やっと木型がハマる。

 

 

ううむぅ、、、かかとの芯の潰れはやはりかなり手ごわそうだ。潰れた所が全然伸びない。。。より詳細に状態を見るために、このままヒールを外しちゃおうか、ということになる。おもむろに野口さんがドライバーを突っ込んだかと思うと、あっという間にヒールを外してしまった。

 

 

 

どのみち取り外すんで、ということで両足ともにヒールを外してしまう。

 

 

うむ、左足かかとの潰れはやはり芯材を入れ替えて釣り込み直す必要がありそうだ、ということで皆の意見が一致。ただし、トウとは異なり、アッパーやソール周りへのダメージはなさそう。どうやら、左足は真上から、右足はトウを中心に真横からぺしゃんこに潰されたようだ、、、

 

 

ということで、今回の検討会での議論の結果、ピノコ再生方針として以下が決定した。

 

  1. 分解して、芯材を除去、トウ革も似た色の新しい革に交換、サイド部分は釣り込み代がちぎれているため継ぎ足す
  2. 上記のアッパー補修後、新しい芯材を入れて、釣り込み直し
  3. ウェルトを新しく掬い縫いして、底付けし直し

 

 

さて、問題は「木型」だ。今回の検討会で装着した野口さんの木型をそのまま使うか、同じサイズであるIWAさんの木型も試してみることとし、それでどこまでいけそうか確認、どうしても合わない場合はまた後日考える、ということとした。新しくマイ木型を作れば当然ベストフィットだが、それだけコストが跳ね上がってしまう。

 

また、ピノコ再生の実務分担が次のように決まった。

分解からアッパー補修、本底付け:IWAさん
ヒール取り付けから仕上げまで:野口さん

 

そして全体コーディネートはMSY、という布陣で進めていくことに。

 

こうして、ピノコ再生の場はIWAさんのもとへと移ることに。次のマイルストーンは、分解後の状態と木型のフィット具合を見た上で、補修段取りおよび必要資材などIWAさんによる概算見積となった。

 

 

ピノコ、いよいよ君の再生に向けた手術の開始だよ。もう少しの辛抱だ!「ブラックジャック」IWAさんに執刀して貰うよ!

 

なお、この検討会場にIWAさんが大事な靴作り道具を置き忘れて帰ったことは内緒である。

 

 

第三夜へつづく

 

 

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第六夜

最終夜

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