ピノコ解体
2019年4月某日。
IWA氏は慎重にピノコを解体していた。ひとつひとつ慈しむように、また、後工程で綺麗に元に戻せるようにと、解体した各パーツを丁寧に並べていた。
※1:2枚目の画像、左から「アッパー」「ウェルトとハチマキ、中にシャンク」「中底」「本底」「ヒール」
やはり左足のトウの周りの損傷は激しい。思った以上にちぎれてしまっている。
※2:ウェルトとアッパーを留める掬い縫いの穴ごと強い力で引きちぎられたため、穴が大きく拡がり、引き裂かれてしまっている。
右足の方はかかとの芯材の潰れだけなのでアッパーも綺麗に残っている。釣り込み直しても大丈夫そうだ。
※3 本来の掬い縫い穴はこのような感じである。
木型
さて、問題は木型である。
IWA氏はほぼ同じサイズと思われる自分の木型との適合度を見ようと中底を取り出した。
左足は掬い縫い糸のちぎれた箇所が中底にまでダメージが及んでいる。
新しい中底を作るために厚みも計測しておこう。
中底の形を紙に写し取り、IWA氏所有の木型のそれとの差異を確認する。
IWA氏は驚きのあまり思わず声がかすれてしまった。
「ラ、ラッキーが半端ねぇ。。。」
なんと、IWA氏所有の木型の中底とピノコのそれとは極めて近い形をしていたのだった。
つま先と踏まず部分に僅かな差があるだけ。これは偶然か紙のいたずらか、、、いや神のいたずらか!
削るのではなく盛るのであれば元に戻せるのでIWA氏はそのまま自分の木型で作業を進めることとした。さっそくパテでモリモリしてみる。
ひやあつ氏の日頃の行いが素晴らしいのか、はたまた運命のいたずらか。トウ部分を一部パテ盛りしただけでほぼ同じ木型が完成してしまった。
中底加工
勢いがついたIWA氏はどんどん作業を進める。
新しい中底を切り出し、銀面を剥いでおく。
水で濡らした中底を木型の底に釘で留め、木型の形に沿うようにゴムで圧迫しながら乾かしていく。
ボールガースのラインを元に中底設計をしていく。
人間、作業がノッてきて集中すると写真を撮るのを忘れてしまうものだ。
気がついたらあっという間に中底が完成していた。
中底はいわばピノコの骨格。見事に美しい骨格に仕上がった。
さあピノコ、次はこの骨格の上に君の身体を整えていくよ。
第四夜へつづく
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